旧神戸市立生糸検査所

旧神戸市立生糸検査所

神戸市中央区新港地区に立つ「旧神戸市立生糸検査所」（きゅうこうべしりつきいとけんさじょ）は、神戸港の歴史と近代建築の遺産を今に伝える重要な建造物です。神戸税関の向かい、新港貿易会館の北側に位置しており、往時の国際貿易都市神戸の面影を色濃く残すエリアにあります。

建物の概要と歴史

この建物は1927年に竣工しました。当時の日本は生糸が主要な輸出品であり、神戸港もその重要な積出港の一つでした。旧神戸市立生糸検査所は、輸出される生糸の品質を厳格に検査するための施設として建設されました。その建築は、当時の流行を取り入れつつも独自性の高い、特徴的なデザインを持つ近代ビルとして知られています。

長年にわたり生糸検査の役割を担った後、この建物は隣接する旧国立生糸検査所と一体で、独立行政法人農林水産消費技術センターの施設として利用されていました。しかし、2008年度末に同センターがポートアイランドへ移転することになり、跡地の利用に関する懸念が生じました。

神戸市は、この新港地区が持つ近代都市の歴史的景観を保全することの重要性に着目しました。歴史的建造物としての価値と、将来的な活用可能性を考慮し、市が建物を買収することを決定しました。これにより、神戸港の歴史を物語る貴重な建築物が失われることなく、新たな役割を与えられることとなったのです。

現在の活用：デザイン・クリエイティブセンター神戸（KIITO）

神戸市による買収後、旧神戸市立生糸検査所は改修され、2012年8月からは「デザイン・クリエイティブセンター神戸」（通称：KIITO／キイト）の旧館として活用されています。隣接する旧国立生糸検査所はKIITO新館となり、両館一体でデザインとクリエイティブ分野の活動を推進する拠点となっています。

KIITOは、デザインの視点から様々な社会課題を解決するための活動や、創造性を育むプログラムを展開しており、神戸市民だけでなく国内外から多くの人々が訪れる場所となっています。歴史ある空間が、現代の創造的な活動を支える場として生まれ変わった好例と言えるでしょう。

主な施設

KIITO旧館（旧神戸市立生糸検査所）の内部には、様々な施設が設けられています。訪れる人々が交流し、学び、創造する場を提供しています。

1階: カフェ、クリエイティブスタジオ、プロジェクトスペース1A
2階: 生糸検査所ギャラリー（建物の歴史を展示）、ギャラリーC、ライブラリ、プロジェクトスペース2A
3階: プロジェクトスペース3A
4階: プロジェクトスペース3A

これらの施設では、企画展、ワークショップ、講演会などが随時開催されており、常に活気にあふれています。

立地とアクセス

旧神戸市立生糸検査所は、神戸港に面した新港地区の中心部に位置しています。周辺には、神戸税関や新港貿易会館といった歴史的建造物、神戸商工貿易センタービルや東遊園地などがあり、港町の雰囲気を楽しみながら散策することができます。また、日本で最も短い国道として知られる国道174号線にも西側で面しています。

公共交通機関を利用する場合、各線三宮駅または三ノ宮駅から徒歩約20分、ポートライナー貿易センター駅からは徒歩約5分と、比較的アクセスしやすい場所にあります。

旧神戸市立生糸検査所は、かつて日本の主要産業であった生糸貿易を支えた歴史的な背景を持ちながら、現在はデザインとクリエイティブの力で新たな価値を生み出す現代的な拠点として機能しています。神戸港の発展を見守ってきたこの建物は、歴史と未来をつなぐシンボルとして、これからも多くの人々にとって重要な存在であり続けるでしょう。歴史的建造物であり、現在も活発に利用されている点において、神戸の近代化遺産としても特筆すべき存在です。

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