早瀨憲太郎

早瀬 憲太郎（はやせ けんたろう）氏は、1973年生まれの日本の教育者であり、多才な映像作家、そしてデフリンピックの舞台でも活躍するアスリートでもあります。ろう者としての自身の経験を活かし、教育、芸術、スポーツの様々な分野で精力的に活動を展開しています。妻である早瀬久美氏は、聴覚障害を持つ人物として初めて薬剤師となったことで知られており、共にデフリンピック日本代表を務めた経験があります。

教育者としての歩み

奈良県に生まれた早瀬氏は、大学在学中に全日本ろう学生懇談会の中央委員長を務めるなど、早くからろう教育やろう者の権利に関する活動に携わっていました。1993年には、ろう児を対象とした学習塾「早瀬道場」を設立し、自ら塾長として指導にあたっています。また、東京都立大塚ろう学校で講師を務めたほか、「ろう者自身がろう児のための教育を担う」という理念のもと、1997年に設立された非営利団体「スマイルフリースクール」の理事長も務めるなど、ろう児教育の現場を長年支えています。

映像作家としての活動

大塚ろう学校で早期教育相談指導員として映像教材の制作に携わったことを契機に、映像制作の世界へ本格的に足を踏み入れました。ろう児向けの教材ビデオや教育映画、そしてろう者をテーマとしたドキュメンタリーやドラマなど、多岐にわたる映像作品を手がけています。その作品は国内外で高く評価されており、2004年には大塚ろう学校の生徒たちと協力して制作した『あきらめないで』が聴覚障害者映像フェスティバルin嵯峨野で聴覚障害者映像大賞を受賞。さらに、2006年に制作と脚本を務めた『迂路（うろ）』は、トロントろう映画祭で最優秀賞に輝きました。2008年には、全日本ろうあ連盟創立60周年記念事業として制作された映画『ゆずり葉-君もまた次のきみへ-』の脚本・監督を担当し、大きな反響を呼びました。続く全日本ろうあ連盟創立70周年記念事業としての映画『咲む』（2020年）でも脚本・監督を務めています。テレビの世界でも、NHKの『みんなの手話』で講師を務めたほか、『目で聴くテレビ』内の番組でプロデューサーを務めるなど、幅広く活躍しています。

主な映像作品：

教材ビデオ『絵本であそぼ』（1999年、制作）
映画・ドラマ：
『あきらめないで』（2004年、制作、聴覚障害者映像大賞受賞）
『迂路（うろ）』（2006年、制作・脚本、トロントろう映画祭最優秀賞受賞）
『ゆずり葉-君もまた次のきみへ-』（2008年、脚本・監督）
『咲む』（2020年、脚本・監督）
テレビ番組：
『わんぱく子ども放送局』（プロデューサー、「目で聴くテレビ」内）
* 『NHKみんなの手話』（2007年 - 、講師）

デフアスリートとしての挑戦

教育者、映像作家としての顔を持つ一方で、自転車競技のデフアスリートとしても輝かしい実績を上げています。2013年のソフィアデフリンピックでは、自転車競技の日本代表として出場しただけでなく、選手団の監督も兼任しました。その後も現役選手として鍛錬を続け、2017年のサムスンデフリンピック、そして2022年のブラジルデフリンピックと、三大会連続で自転車競技の日本代表入りを果たしました。これらのデフリンピックには、妻の久美氏も自転車競技のスタッフ兼選手として共に日本代表に名を連ねており、夫婦でのデフリンピック出場は大きな注目を集めました。

早瀬憲太郎氏は、教育者、映像作家、アスリートという三つの分野で卓越した才能を発揮し、ろうコミュニティにおける教育環境の整備、文化芸術活動の振興、スポーツを通じた社会との交流促進に大きく貢献しています。その多角的な活動は、ろう者の可能性を示すだけでなく、社会全体の多様性への理解を深める上で重要な役割を果たしています。

早瀬憲太郎＆早瀬久美blog
スマイルフリースクール

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