旭酒造 (山口県)

旭酒造株式会社の概要

旭酒造株式会社（あさひしゅぞう）は、山口県岩国市で創業された日本酒の製造業者です。同じ名前の酒造会社が全国に存在しますが、旭酒造とは無関係です。旭酒造の特筆すべき点は、醸造アルコールなどの副原料を使用せず、精米歩合が50％以下の純米大吟醸酒だけを製造していることです。2020年には、山田錦を使用した純米大吟醸酒「獺祭」（だっさい）を唯一の製品として、名高い酒の名声を築きました。「獺祭」という名前は、蔵元が元々所在していた「玖珂郡周東町獺越」（おそごえ）や、正岡子規の俳号の一つに由来し、酒作りにおける独自の進取の精神を反映しています。

旭酒造は、普通酒を製造しないという高リスクな経営方針を採用しています。これは、三代目の社長である桜井博志が1984年に家業を継いだ際、山口県という酒処ではない土地で小規模な酒蔵を拡大するために、「酔うためや売るための酒ではなく、味わうための酒を求める」というポリシーのもと、普通酒「旭富士」の製造を中止したことから始まりました。

桜井が社長に就任した当時、旭酒造の業績は厳しく、彼が手がけていた酒は品質に欠けていました。そのため、桜井は一念発起し、まずは品質の向上を図り、純米大吟醸酒の製造に特化した方針を掲げました。彼は酒作りの常識を打破し、社員が正確なデータをもとに製造を行い、品質管理を徹底することによって、より優れた酒の生産に取り組みました。さらに、東京市場に目を向け、積極的な販売を行った結果、飲食店や海外市場においても大きな支持を得ることになるのです。

経営の変革と成長

桜井博志の指導のもと、旭酒造は醸造方法や品質向上に取り組み、1990年には精米歩合50％の「獺祭」、さらに1992年には精米歩合23％の「獺祭」を販売開始しました。このような高品質の商品が東京の口コミで広まっていくと共に、海外市場でも成功を収め、2016年には年間売上が100億円を超え、日本の酒造業界のトップスタイルとなり、2023年には174億円の売上を達成しました。

旭酒造の製造方法には、一般的な酒蔵とは異なり、専任の杜氏が存在しないことが特徴です。元々は多くの蔵と同様に杜氏が各工程に関わっていましたが、地ビール事業の失敗を契機に、2000年から杜氏に依存せず、データに基づいて醸造を行う手法に転換しました。

例えば、米の吸水量を計測しながら発酵状態をデータで管理し、設備も整えて年間を通して質の高い日本酒を生産しています。その結果、旭酒造は精米に最大168時間をかけており、特に精米歩合23％の日本酒を創り出す技術を誇示しています。

販売戦略と市場

卸業者を通さずに、正規の取扱店約630店舗に対して直接販売を行う独自の販売戦略を採用する旭酒造ですが、高い需要に対して流通量が追いつかず、正規業者以外の店舗で希望小売価格と異なる高価格で販売されることが問題視されています。これに対処すべく、2017年12月には「お願いです。高く買わないでください」との全面広告を出し、適正価格での購入を訴えたこともあります。

また、旭酒造は2020年にニューヨーク州に酒蔵を建設することを発表し、現地生産の米を使用した新たなブランドの日本酒を展開する計画を進めています。日本国内外での人気が加速する中、この新ブランドも期待されます。

まとめ

旭酒造株式会社は、品質を重視した純米大吟醸酒の製造とそれに伴う高リスクな経営スタイルで知られます。桜井博志社長による品質向上と製造方法の革新努力の結果、国内外での名声を築き、成長を続けている企業です。時代を超えた職人技術と最新のデータ管理を組み合わせ、旭酒造はこれからも日本酒の魅力を広げ続けるでしょう。

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