明智光慶

明智光慶は、安土桃山時代に生きた武将、明智光秀の長男です。母は煕子で、通称は十五郎（異説では十兵衛）として知られています。光秀の家族の中でも、十五郎は史料から実在が推認できる人物であり、光秀の書状にもその名が登場します。

しかし、通説では十五郎を光慶と同一視しますが、『明智軍記』では十兵衛光慶とされているため、光慶の諱が正しくないとする説もあり、その諱は厳密には不明です。光慶が歴史に登場するのは、父光秀が丹波国に亀山城を築城した頃で、初陣の記録や目立った活動は残されていません。

天正10年5月28日、光秀が主催した西之坊威徳院連歌（愛宕百韻）では、十五郎（光慶）の名が見られ、最後の句を詠み会を締めくくったとされます。

本能寺の変前後の光慶の行動については2つの説があります。

1つ目は、亀山城に在城していた光慶が変の一報を聞き、父の行為を嘆き悲しみ、その場で悶死（または病死）したという説です。

2つ目は、変の前から近江国・坂本城にいた光慶が、山崎の戦いで父が討たれた後、坂本城を守っていた明智秀満と共に、中川清秀や高山右近らの攻撃を受け、落城時に一族と共に自害したという説です。

また、光慶には生存説も存在します。妙心寺の住職となった玄琳が光慶であるという説や、光秀の唯一の肖像画がある和泉国の本徳寺を開山した南国梵桂が光秀の子であるという説もあります。いくつかの系図には他に相当する男子が見られないため、光慶が出家して僧になったのではないかとする説も出ています。

しかし、これらの説には確たる証拠がなく、信憑性は低いとされています。千葉県市原市不入斗には、明智光秀の側室の墓と伝えられるものがあり、そこには上総に脱出したとする十五郎の名が刻まれています。墓石には土岐重五郎と刻まれていますが、これが明智光慶の墓ではないかとする指摘もあります。この墓は、光秀の子孫と主張する一族によって管理されており、歴代の墓石には桔梗紋が刻まれています。

さらに、光慶が鹿児島へ落ち延び、島津家久（忠恒）に庇護されたという説も存在します。

このように、明智光慶の生涯は多くの謎に包まれており、確実な史料は少ないため、さまざまな解釈が存在しています。しかし、その存在は明智光秀の一族を研究する上で重要な人物であることに変わりありません。

参考文献:

中岡未竜「国立国会図書館デジタルコレクション 光秀の系図と其眷族」『明智光秀今昔観 : 附・福知山繁昌記』丹波史蹟研究会、1919年。
熊田葦城「国立国会図書館デジタルコレクション 明智光慶十四歲にして悶死す」『少年武士道. 第1』東亜堂、1908年。
小和田哲男『明智光秀と本能寺の変』（Kindle）PHP研究所〈PHP文庫〉、2014年。
楠戸義昭『戦国武将「お墓」でわかる意外な真実』PHP研究所、2017年。
大野富次『明智光秀は天海上人だった！』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019年。

外部リンク:

伝　明智十五郎の墓

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