明治十六年事件

明治十六年事件

明治十六年事件は、1883年（明治16年）10月に東京大学の学生と予備門生によって引き起こされた、寄宿舎での大規模な騒動です。この事件は、単なる学生の反抗としてだけでなく、当時の社会情勢や学生たちの鬱積した不満が複雑に絡み合って発生したとされています。

事件の背景

事件が発生した1883年頃の日本は、自由民権運動に対する政府の弾圧や、松方デフレによる経済の混乱など、社会全体が不安定な状況にありました。東京大学の寄宿舎で生活する学生たちは、政治活動への参加が禁止され、寄宿舎の管理が厳格化されるなど、様々な制約を受けていました。これらの状況に対する不満が、学生たちの間で日増しに高まっていました。

また、学生たちは日々の食事に対する不満も抱えており、これらの不満が事件の引き金になったとも言われています。さらに、祝典などにおける学生たちの奔放な行動も、事件の背景として挙げられます。

事件の経緯

1883年10月27日、例年夕刻に行われていた学位授与式が昼間に変更されたことに不満を抱いた寄宿舎の学生たちは、式への参加を拒否しました。学生たちは「遠足」と称して旗を掲げ、上野から日暮里原野（現在の東京都北区飛鳥山付近）まで行進しました。そこで酒宴を開き、酩酊した状態で帰校した後、他の学生たちも巻き込み、寄宿舎の板塀や木柵を破壊し、舎監室を荒らし、食堂に乱入するなど、騒動を起こしました。この事件は、学生たちの鬱積した不満が爆発した結果と言えるでしょう。

事件に対する処分

この事件は政府首脳にも知れ渡り、大学側は寄宿舎生全員の146名に対して退学処分と、他校への入学禁止を命じました。しかし、文部省は人材の減少を懸念し、小中村清矩教授も大学側に嘆願した結果、当初は復学を拒否していた加藤弘之綜理が、学生たちの情状を酌量し、翌年の5月までに退学者全員に対して形式上の再入学を許可しました。これにより、約60名が復学を果たしました。

事件に関与した著名な生徒

この事件には、後に各界で活躍する多くの著名人が関わっていました。主な人物として、奥田義人、平沼騏一郎、日置益、萩野由之、池辺義象、関根正直、佐藤定介、三上参次、松方幸次郎、丸山正彦、三浦純雄、長崎剛十郎（長崎省吾の甥）、長崎豊十郎（千坂光子の元夫）などが挙げられます。これらの人物が、事件を通してどのような経験をし、その後の人生にどう影響を与えたのかは、歴史を研究する上で興味深い点です。

まとめ

明治十六年事件は、当時の社会情勢や学生たちの不満が複雑に絡み合って発生した事件であり、大学の自治や学生運動の歴史を考える上で重要な出来事です。この事件をきっかけに、大学側は学生の意見に耳を傾け、より良い教育環境を提供しようと努めたと言われています。また、この事件に関与した学生たちの中には、後に日本の発展に貢献した人物も多く、この事件が彼らの人生にどのような影響を与えたのか、さらに深く考察する必要があるでしょう。

もう一度検索