明治大学和泉キャンパス

明治大学和泉キャンパスは、東京都杉並区永福に位置し、約8万平方メートルにも及ぶ広大な敷地を持つキャンパスです。ここでは、法学部、商学部、政治経済学部、文学部、経営学部、情報コミュニケーション学部の1、2年生が主に学びます。また、大学院教養デザイン研究科の拠点でもあります。

学生たちの間では、和泉キャンパスで履修した必修科目を3年次以降に駿河台キャンパスで再び履修することを「和泉返し」、卒業できずに留年することを「和泉止まり」と呼ぶなど、独特の学生文化も息づいています。

このキャンパスの歴史は、1923年（大正12年）の関東大震災に端を発します。震災により駿河台校舎を焼失した明治大学は、より広い郊外への移転を検討し、一時は北多摩郡小平村への移転契約を結びました。しかし、震災からの復興資金不足や学内外からの強い反対意見を受け、この計画は中止されます。

駿河台での校舎再建が進む中でも教室の狭隘問題は解消されず、新たな予科校舎の建設地として、1930年（昭和5年）に和田堀町和泉新田の旧火薬庫跡地が選ばれ、購入されました。この土地は江戸時代から火薬庫として利用されてきた場所です。用地買収には、当時の京王電気軌道社長であった井上篤太郎の尽力があったとされています。和泉への予科校舎移転に伴い、1935年（昭和10年）には最寄駅として明大前駅が移転開業し、交通の便が格段に向上しました。

予科校舎が竣工したのは1934年（昭和9年）のことです。開校を祝う「予科移転祭兼体育デー」は、現在の明大祭の源流となりました。その後も武道場や講堂、図書館などが順次整備されましたが、太平洋戦争中は軍に校舎を徴用され、予科は再び駿河台へ移転を余儀なくされます。1945年（昭和20年）の空襲では、駿河台以上に甚大な被害を受けました。

戦後、和泉キャンパスは文系5学部の教養課程のキャンパスとして再出発します。平成期には情報コミュニケーション学部（2004年）や国際日本学部（2008年）の学生も学ぶようになりますが、国際日本学部は2013年に中野キャンパスへ移転し、現在のような学部構成となりました。

キャンパス内には、多様な施設が立ち並びます。中央を担うのは、1988年（昭和63年）竣工の第1校舎で、事務室や各種教室、情報処理施設などを擁し、吹き抜けのアトリウムが開放的な空間を演出しています。2005年（平成17年）竣工のメディア棟は、情報コミュニケーション学部設置に伴い最新のメディア教育に対応できるよう整備されました。大学院の授業に主に使われるリエゾン棟は、元は視聴覚棟として1985年（昭和60年）に建てられました。

図書館機能は、2012年（平成24年）竣工の創立130周年記念和泉図書館が中心です。滞在型図書館として設計され、多くの閲覧席のほか、共同学習室やカフェなどを備え、グッドデザイン賞やBCS賞を受賞するなど高く評価されています。キャンパスの顔である正門周辺や「知の庭」と呼ばれる前庭も同時に整備されました。

学生生活を支える施設としては、売店や書店が入る明大マート、部室棟、そして堀口捨己設計による旧建築（現存せず）の特徴を引き継ぐ第2学生会館や、1993年（平成5年）竣工の学生食堂棟「和泉の杜」などがあります。グラウンドや体育館、トレーニング施設などを備えた総合体育館は、西棟（1996年竣工）と東棟（2010年竣工）から構成され、充実した体育施設を提供しています。2019年（平成31年）には留学生と日本人学生が交流するグローバル・ヴィレッジ（MGV）が、2022年（令和4年）には最新の教育棟である和泉ラーニングスクエアが竣工するなど、施設の整備が進んでいます。

かつてキャンパス内には、1930年から1960年まで明治大学野球部の本拠地であった和泉球場がありました。六大学野球の黄金期を支え、戦後神宮球場が接収されていた時期には六大学リーグの公式戦も開催された歴史ある場所です。キャンパスの一部には、旧火薬庫時代の土塁や、戦前の予科配属将校であった飯塚国五郎少将の留魂碑など、長い歴史を物語る遺構も残されています。

アクセスは、京王線・井の頭線の明大前駅から徒歩約5分と良好です。駅とキャンパスを結ぶ通学路は「明大通り」と名付けられ、かつての混雑解消のため拡幅工事が行われました。キャンパス前の甲州街道にかかる明大前歩道橋も、バリアフリー化されるなど、地域住民や学生の利用を考慮した整備が進んでいます。

明治大学和泉キャンパスは、関東大震災後の歴史を刻みながら発展を続け、現在も多くの学生にとって学びと成長の重要な拠点であり続けています。

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