明治開化 安吾捕物帖

明治開化 安吾捕物帖

坂口安吾の連作時代推理小説『明治開化 安吾捕物帖』は、明治時代を舞台に、紳士探偵・結城新十郎が活躍する物語です。元々は『小説新潮』に「明治開化 安吾捕物」として連載され、単行本化の際に現在の題名に改められました。

作品の特徴

本作は、一見すると時代劇のようでありながら、本格的な推理小説としての側面も持ち合わせています。各エピソードは、泉山虎之介が勝海舟邸を訪れ、事件について語り始めるところから始まるパターンが多く、海舟が推理を披露した後、新十郎が真相を明かすという流れが基本です。

安吾自身も「捕物帖としては特に推理に重点をおき」と述べているように、読者も推理を楽しみながら読み進めることができます。また、勝海舟が推理を外すという意外な展開も、作品の魅力の一つとなっています。

登場人物

結城新十郎: 神楽坂に住む紳士探偵。旗本の家柄で、洋行帰りの美男子。優れた推理能力を持ち、警視庁からも信頼されています。
勝海舟: 氷川の邸宅に隠居している。新十郎が捜査する事件について推理を披露するものの、ほとんどの場合外れてしまいます。
泉山虎之介: 剣術使いで、勝海舟の弟子。新十郎の隣に住んでおり、事件に首を突っ込みたがる。
花廼屋因果: 戯作者。元薩摩藩士で、新十郎や虎之介とともに事件に関わっていく。

物語の展開

物語が進むにつれて、基本的なパターンが崩れていくのも本作の特徴です。海舟の出番が減少し、新十郎の活躍も変化していきます。しかし、それによって物語はさらに多様な展開を見せ、読者を飽きさせません。

作品の評価

発表当時は人気を博したものの、その後は不当に評価されない時期もありました。しかし、花田清輝をはじめとする評論家によって再評価され、現在では坂口安吾の代表作の一つとして広く知られています。

花田は、本作が「日本の伝統との対決にある」と指摘し、安吾の文明批評家としての側面を評価しました。また、尾崎秀樹は、勝海舟を登場させた理由について、「開化期の世相をとらえ、さらに戦後の混沌とした時代相を二重写しにする配慮ではなかったか」と述べています。

多様なメディア展開

『明治開化 安吾捕物帖』は、テレビドラマやテレビアニメ、漫画など、様々なメディアで展開されています。これらの作品は、原作の魅力を活かしつつ、新たな解釈やアレンジを加えて、多くのファンを魅了しています。

テレビドラマ: 1973年に『新十郎捕物帖・快刀乱麻』、2020年に『明治開化 新十郎探偵帖』としてドラマ化。
テレビアニメ: 2011年に『UN-GO』として、舞台設定を近未来に変更したアニメ化。
* 漫画: 横山まさみちやpikomaroによって漫画化。

まとめ

『明治開化 安吾捕物帖』は、時代小説と推理小説の要素を巧みに融合させた、坂口安吾ならではの作品です。個性的なキャラクター、意外な展開、そして時代背景が織りなす独特の雰囲気を、ぜひお楽しみください。

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