明知鉄道アケチ1形気動車

明知鉄道アケチ1形・6形気動車：ローカル線の歴史を彩った車両たち

1985年、旧国鉄明知線の第三セクター鉄道への転換に伴い誕生した明知鉄道。その開業を支えたのが、富士重工業製のレールバスをベースとしたアケチ1形気動車です。5両が製造され、1999年まで活躍しました。その後、1989年には増備車としてアケチ6形が1両登場。アケチ1形とは車内構造などが異なる点が特徴です。本稿では、アケチ1形とアケチ6形の両方を詳しく見ていきます。

開発と設計

アケチ1形は、従来のレールバスよりも車体サイズを拡大し、ボギー台車を採用した点が革新的でした。ほぼ同時期に製造された樽見鉄道ハイモ230-300形と共通点が見られます。軽量化を優先したため、アケチ1形には冷房装置が搭載されていませんでしたが、これはボギー式のLE-Carとしては異例のことでした。エンジンは日産ディーゼル製PE6HT03型ディーゼルエンジンを搭載。アケチ1形では169kW（230PS）、アケチ6形では冷房装置搭載のため出力向上を図り184kW（250PS）に設定されました。

注目すべきは、鉄道車両としては初めて採用されたハイドロ・ダイナミック・リターダと呼ばれる抑速装置です。機関、排気、リターダを組み合わせたこの装置は、ブレーキ性能の向上に大きく貢献しました。両運転台構造で、トイレは設置されていませんでした。座席配置はアケチ1形がセミクロスシート、アケチ6形はロングシートで、お座敷車としても利用可能でした。アケチ5は後にロングシートに改造されています。

車体構造

15m級の車体は、富士重工業製のレールバスLE-Carをベースとしており、バス用部品を多く流用していました。全長2700mm、全幅2440mmの車体は、バス用構体を2台分接合することで実現されました。前面は貫通式で、乗務員室は左側、乗務員扉は左側のみです。客用扉は片側2ヶ所、両端に設置され、窓配置も特徴的でした。アケチ6形では両端の窓が固定式に変更されています。外装はクリーム色を基調に、朱色の帯が3本巻かれ、明知鉄道の頭文字「A」をモチーフにしたデザインが施されていました。アケチ1形の車内はセミクロスシートが4組とロングシートが混在するレイアウトでしたが、アケチ6形は全席ロングシートでした。

走行装置と空調装置

アケチ1形とアケチ6形共に、日産ディーゼル製PE6HT03型ディーゼルエンジン1基を搭載、新潟コンバーター製DB115液体変速機を介して2軸駆動の台車に動力を伝達しました。台車はFU34D/T型を採用。ブレーキシステムはSME三管式直通ブレーキと、前述のハイドロ・ダイナミック・リターダを併用していました。暖房はエンジン排熱を利用した温風式でしたが、冷房装置はアケチ1形にはありませんでした。アケチ6形にはバス用冷房装置が搭載され、その能力は25.6kW（22,000kcal/h）でした。

運用とその後

アケチ1形5両は明知鉄道開業と同時に導入され、明智～恵那間の運行に使用されました。2両編成での運行も行われていました。アケチ6形は1989年に導入され、1992年にはアケチ5の座席がロングシートに改造されました。その後、より新しいアケチ10形への置き換えが進み、アケチ1形は1997年から1999年にかけて廃車となりました。アケチ6形も2017年にアケチ100形に置き換えられ、廃車されました。現在、アケチ1は山岡駅に、アケチ2は阿木駅に残されています。アケチ1は「森の列車カフェ」として活用されています。

参考資料

本稿では、以下の文献を参考に記述しました。

書籍：寺田祐一『私鉄気動車30年』
雑誌：[鉄道ピクトリアル]
* Web資料：鉄道ホビダス、明知鉄道公式ウェブサイト、railf.jpなど

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