柳井隆雄

柳井 隆雄（やない たかお）

柳井隆雄は1902年2月15日に広島県福山市で生まれ、1981年5月30日に亡くなった日本の脚本家です。彼のキャリアは松竹映画において非常に重要なものであり、数多くの作品を通じて映画界に大きな影響を与えました。

経歴

柳井は1914年に渡鮮し、京城中学校で学ぶことになります。1920年には朝鮮総督府に勤務した後、1916年に帰国しました。国民英学会に通いましたが、まもなく中退し、武者小路実篤の下で学びます。1922年には「新しき村」運動に参加し、彼の生真面目さと理想追求の姿勢が際立ちました。これが後に彼の文才が評価される土壌となります。

その後、柳井は上京し、1928年に松竹キネマ研究所の脚本家養成所に入所しました。彼は池田忠雄や大黒東洋士とともに第1期生としての道を歩みます。そして1929年には彼の最初の脚本『岡辰押切帳』が採用され、以後松竹の代表的な脚本家としてその名を広めていきました。

主な作品

柳井は、「大船調メロドラマ」において欠かせない存在とされており、その作品数は約200本にも達します。特に、菊田一夫の原作による映画『君の名は』は、戦前の大ヒット作として知られています。また、戦前の時代に人気を博した『与太郎』シリーズや、『悲恋華』『人妻椿』『春雷』といった作品が、彼の名を高めました。小津安二郎監督の『父ありき』にも携わり、小津作品における尾道ロケは、柳井のいとこの旅館の協力によって実現したと言われています。

柳井の社会的影響を示す作品としては、1938年に矢田津世子の短編を基にした『母と子』があります。この作品は新人監督の渋谷実によって社会劇として見事に仕立てられ、柳井の評価を一気に高めました。その他にも、『父の願ひ』『戀墓小唄』『新しき家族』『母』『碑』『純白の夜』『命美わし』『絵島生島』など、彼の手掛けた作品は多岐にわたります。

映画界における位置づけ

柳井は、松竹の脚本家の中で池田忠雄に次いで認められ、野田高梧と並び称される存在でした。彼は戦後の映画産業の変化に必ずしも忠実ではありませんでしたが、実際には50年以上に渡って松竹に貢献し続けました。日本映画史において貴重な記録となる存在です。

晩年、彼は1969年に紫綬褒章、1976年に勲四等旭日小綬章を受賞し、その業績が評価されます。1981年、長い闘病生活の末に大腸癌で寂しくこの世を去りましたが、享年79という年齢でありました。柳井隆雄の誠実な人柄は、多くの人々に愛され続けたことでしょう。

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