春一番 (キャンディーズの曲)

キャンディーズ「春一番」：時代を超えて愛される名曲の軌跡

1976年3月1日発売、キャンディーズ9枚目のシングル「春一番」。この曲は、彼女たちの代表曲として、現在も広く愛され続けています。CBS・ソニー調べでは、1978年の解散コンサート時点での売上枚数は49万枚を記録するなど、その人気は絶大でした。

制作秘話：アルバム曲からのシングルカットという異例な道のり

「春一番」は、前年4月発売のアルバム『年下の男の子』に収録された楽曲でした。渡辺プロダクション所属の歌手として、アルバム収録曲がシングルカットされるのは初の試みだったと言われています。シングルバージョンは、アルバムバージョンとは異なるアレンジが施されています。ストリングスとブラスが加えられ、ベースとドラムの音量を抑えることで、ボーカルが際立ち、より軽快な印象に仕上がっています。

このシングル化に最も尽力したのは、当時のプロデューサー松崎澄夫氏です。「春一番」を聴いた瞬間からシングル化を構想しており、渡辺プロダクションのスタッフと協力し、シングルリリースを実現させました。渡辺プロダクションがチームワークを重視していた当時、ファンクラブを含む多くのスタッフの努力が結実した成果と言えるでしょう。

さらに興味深いエピソードがあります。当時、ホリプロに所属し、山口百恵さんのディレクターを務めていた川瀬泰雄氏は、キャンディーズが「春一番」をレコーディングしている隣室で山口百恵さんのレコーディングを行っていました。その際、スタジオから流れてきた「春一番」を聴いて、松崎氏にシングル化を強く勧めたのです。松崎氏もその意見に賛同し、レコーディングスタッフと穂口雄右氏の間では、以前からシングル化の意思が固まっていたと言えるでしょう。

作詞は当初千家和也氏が担当予定でしたが、穂口氏がメロディー制作時に仮で書いた歌詞を千家氏が評価したことで、穂口氏が作詞も担当することになりました。

広告・紅白出場など：社会現象としての「春一番」

「春一番」は服部時計店のCMソングにも起用され、その知名度をさらに高めました。1976年の第27回NHK紅白歌合戦にも出場、キャンディーズにとって2年連続2回目の紅白出場となりました。

一時的なカラオケ配信停止と復活

楽曲制作者の穂口雄右氏が2012年3月31日にJASRACを退会したことにより、第一興商とエクシングが「春一番」のカラオケ配信を一時停止しました。そのため、一部のカラオケ店では歌えなくなる事態が発生しましたが、2015年に穂口氏がJASRACに管理権を返還したことで、配信は再開されました。

制作スタッフとその後

CBS・ソニーの担当ディレクターとして、若松宗雄氏が携わっていました。営業畑出身の若松氏は、「春一番」から「アン・ドゥ・トロワ」までのキャンディーズ楽曲制作を担当し、その後は企画制作6部のチーフプロデューサーに転出、後に松田聖子氏を発掘することになります。

また、作詞家の阿久悠氏は自身の著書『実戦的作詞講座』で、「この曲は三橋美智也のためにほしかった」と述べています。

カップリング曲「二人だけの夜明け」とその他

カップリング曲の「二人だけの夜明け」は、竜真知子氏作詞、宮本光雄氏作曲、竜崎孝路氏編曲です。「お久ぶりですね」というバージョンの存在も確認されています。

多数のカバー：時代を超えた魅力

「春一番」は、クリスタル・スリー、ワイルド・フラワーズ、ONCE UPON A TIME、姜小青、ウルフルズ、ゆず、いきものがかり、たかはし智秋・今井麻美、早見沙織・野水伊織・美名、若旦那、上國料萌衣（アンジュルム）など、多くのアーティストによってカバーされています。これらのカバーは、言語やアレンジが異なっても、「春一番」が持つ普遍的な魅力を改めて示しています。それぞれのアーティストが独自の解釈を加え、楽曲に新たな息吹を吹き込んでいる点も見逃せません。

まとめ

「春一番」は、キャンディーズの代表曲としてだけでなく、日本の音楽史においても重要な位置を占める楽曲です。その制作過程、ヒットの要因、そして数々のカバーを通して、時代を超えて愛され続ける理由を考察できるでしょう。楽曲を通して、1970年代の音楽シーン、そして日本の音楽文化の一端に触れることができるでしょう。

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