春柳社

春柳社について

春柳社（しゅんりゅうしゃ）は、1906年から1915年まで存在した中国の演劇団体で、特に日本と中国の演劇における架け橋となりました。団体は1906年の秋に東京に住む中国人留学生の手によって設立され、活動は辛亥革命直前の日本における前期と、革命後の中国における後期の二つに分けられます。

前期春柳社

前期春柳社は、1906年に李叔同や曾孝谷といった演劇愛好者によって設立され、当初は演劇だけでなく、幅広い芸術の革新を目指していました。規約は前期文芸協会と似たような内容でした。1907年に活動が開始され、最初の公演として2月に小デュマの『椿姫』を基にした『茶花女』の一部を上演しました。この公演をきっかけに、欧陽予倩などが参加し、同年6月には本郷座で『黒奴籲天録』（アンクル・トムの小屋からの脚色）を公演し、大成功を収めました。この公演は非常に注目を集め、中国で早期話劇が生み出される要因となり、『黒奴籲天録』は中国話劇の先駆けとして位置付けられました。

その後、李叔同は演劇から離れ、陸鏡若が新たに加わりますが、1911年には辛亥革命の影響で多くのメンバーが故郷へ帰国しました。

後期春柳社

1912年の旧正月に、陸鏡若と欧陽予倩は上海で新劇同志会を結成し、そこの観客に向けて新たな演劇スタイルを披露します。初の公演は受け入れられなかったものの、地方での公演を経て、1913年には湖南省で長期公演を行いました。しかし、第二革命の失敗や秋の反革命運動の影響で劇団は解散し、再び上海に戻る道を選びました。

1914年には某得利劇場を借りて公演を行い、劇団名は新劇同志会でしたが、春柳劇場の看板を掲げ続け、実質的には春柳社として認識されました。今日では、1912年以降の活動が後期春柳社の一環と見なされています。この時期の代表作には『家庭恩怨記』や『不如帰』などがあります。

春柳社は、確実に台本を用いた演劇を行うことで、他の劇団と異なり「芸術派」としての強い傾向を示しましたが、経営は厳しいものでした。1915年9月には、中心的な役割を担っていた陸鏡若が亡くなり、団体は解散を余儀なくされました。

春柳社の影響

春柳社の活動は、文明戯（早期話劇）の発展に寄与し、後の五四運動や新文化運動以降の話劇の誕生に欠かせないものでした。団体は日本新派の影響を指摘されつつも、最近では文芸協会や日本新劇の要素を持つことが認識され、近代劇としての二重性も持っていたことが注目されています。

近代劇の要素があるため、春柳社は中国話劇の重要な先駆者とされているのです。

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