春江院

春江院（しゅんこういん）

春江院は、愛知県名古屋市緑区大高町に位置する曹洞宗の寺院です。大高山という山号を冠し、本尊として多宝如来を祀っています。

歴史

寺伝によれば、弘治2年（1556年）に大高城主であった水野大膳が、父である水野和泉守の菩提を弔うために創建されました。開山は尾張横須賀長源寺の4世である峰庵玄祝で、寺号は水野和泉守の法名「春江全芳禅定門」に由来します。水野大膳は寺領として15貫を寄進しましたが、後に豊臣秀吉によって寺領は20石と定められ、そのうち14石9斗6升が年貢地となり、残りの5石4升が年貢免除とされました。江戸時代には本堂などが再建されています。

近代

明治12年（1879年）には書院が竹田庄九郎宅から移築され、明治後期には茶室が築かれました。昭和に入ってからは庫裏と不老閣が建てられています。これらの建物は戦災を免れて現存しており、平成17年（2005年）7月12日には境内に建つ7棟が国の登録有形文化財に登録されました。春江院は文人墨客との縁が深く、境内墓地には余延年、山口耕軒、下村丹山、下村實栗などの墓碑が置かれています。

文化財

春江院には、歴史的価値の高い建造物が多く残されています。

本堂: 文政13年（1830年）に竹中組9代当主の竹中和泉によって建てられたもので、入母屋造、正面向拝付、本瓦葺です。六間取りの方丈形式で、江戸時代後期の典型的な曹洞宗本堂とされています。装飾は比較的控えめですが、妻飾の虹梁・蟇股・懸魚などに彫刻が施されています。
山門: 本堂と同じく文政13年（1830年）に建てられた一間一戸薬医門で、屋根は切妻造、本瓦葺。妻飾には大柄の板蟇股が用いられ、虹梁・木鼻・蟇股に装飾が施されています。昭和19年（1944年）の昭和東南海地震で倒壊しましたが、後に再建されました。
本玄関および書院: 書院は天保元年（1830年）から慶応3年（1867年）にかけて有松絞りの開祖・竹田庄九郎宅に建てられたもので、床・棚・付書院のある12畳間と床付の18畳間の2部屋に広縁が付いています。襖絵の「しらさぎ」は狩野派の狩野永秀によるもので、参勤交代の諸大名や公家の休息に使われていましたが、明治12年（1879年）に移築されました。書院と本堂を繋ぐ本玄関は廊下と和室で構成され、北面中央に式台が設けられています。
茶室: 明治時代に建てられた尾州久田流の開祖・西行庵下村實栗の作による草庵風茶室です。切妻造・桟瓦葺の建物で、茶席は二畳台目、炉は向切。杉皮葺を格子状に組んだ竹で押さえて捨柱を立てた土庇のほか、棹縁天井の棹や化粧屋根裏の垂木や木舞など各所に竹が使われています。
鐘楼: 慶応元年（1865年）に建てられた鐘楼は、玉石で基壇を築き、その上に簓子下見板張の袴腰が組まれて回廊状に擬宝珠高欄が設置されています。組物は出三斗の詰組で二軒扇垂木、入母屋造・桟瓦葺、格天井の格間には彩色が施されています。
不老閣: 昭和11年（1936年）に建てられた切妻造・下屋庇付の平屋建。床付8畳の一の間、4畳半の二の間があり、南と西に縁が付けられ、磨き丸太の床柱や床脇の網代天井のほか、縁の化粧屋根裏を丸垂木に木舞打とするなど数寄屋風の作りとなっています。
庫裏: 昭和8年（1933年）に建てられた庫裏は切妻造・桟瓦葺で2階建。北東隅の吹抜土間の梁組や洋風の階段手摺などに特徴があります。

末寺

かつて春江院の末寺は大高町内に4ヶ所ありましたが、現在は弥陀寺が無住となっています。

孝養山 明忠院（大高町鷲津5）
日陽山 東昌寺（大高町西門田15）
医王山 薬師寺（大高町高見75）
* 無量山 弥陀寺（大高町字江明24）

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