昭和33年塩害

昭和33年の塩害について

昭和33年（1958年）、日本の九十九里平野北部や霞ヶ浦周辺で大規模な塩害が発生しました。この塩害は、利根川下流地域で取水した水を利用していた農地に多大な影響を及ぼし、特に農業の生産性に深刻な打撃を与えました。

塩害の背景

昔は、九十九里平野北部に「椿の海」という湖が存在していました。この湖は、1671年に干拓が行われ、以来補水の供給源として農地に利用され続けました。しかし、干拓によって水の管理が難しくなり、地域住民は干ばつや洪水に苦しむことが多くありました。

昭和25年（1950年）には、黒部川から利根川の水を取り入れ、千葉県香取郡東庄町にある笹川揚水機場で農業用水の供給が始まる「大利根用水」が完成しました。この取り組みにより、農業に必要な水の安定供給がようやく実現しました。しかし、当時の霞ヶ浦は汽水湖であり、利根川下流部では浚渫事業が進行していたため、海水の逆流が懸念されました。

塩害の発生と影響

大利根用水が完成した後の昭和30年（1955年）には、すでに塩害が顕在化し、約3,200町歩の農地が影響を受けました。そして三年後の昭和33年には、塩害の被害が急増し、九十九里平野中央部の山武郡や茨城県霞ヶ浦周辺にまで及び、被害面積は約30,000町歩に達しました。このような広範な被害は、農業の持続可能性に重大な脅威となったのです。

塩害対策

この塩害を受けて、昭和34年（1959年）には塩害防止を目指した常陸川水門の建設が始まり、昭和38年（1963年）には完成しました。また、利根川河口の浸食を防ぐための河口堰も昭和40年（1965年）から建設に着手され、昭和46年（1971年）に完成しました。これらの対策は、塩水の逆流を防ぎ地域の水資源を保護するための重要な措置となっています。

結論

昭和33年の塩害は、日本の利根川流域の農業にとって、忘れられない教訓となりました。この出来事は、水資源の管理や防災対策の重要性を再認識させ、将来の農業の持続可能性を考えるきっかけともなりました。地域社会は、環境の変化に対応するための知恵を絞り続けています。

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