大利根用水

大利根用水について

大利根用水は、千葉県北東部の利根川沿岸地域における排水と、九十九里平野北部の地域への農業用水の供給を目的とした用水路です。疏水百選にも選定されており、地域の農業を支える重要な役割を担っています。

概要

大利根用水は、千葉県香取郡東庄町で利根川から取水しています。取水された水は、笹川揚水機場で黒部川に導かれ、地下水路を通って下総台地を越えます。その後、旧椿海沿岸の旭市飛地内の分水工で、東幹線、新川水系、西幹線に分岐し、旭市、匝瑳市、横芝光町（栗山川東岸まで）の農地に灌漑用水を供給しています。

歴史

かつて九十九里平野の北東端には、遊水池として機能し、下流の村々の農地を潤していた椿海という湖がありました。しかし、江戸時代に干拓され、「干潟8万石」と呼ばれる18の村が成立しました。干拓地は水害の影響を受けやすく、排水を優先した幕府は下流に堰を設けることを禁じたため、下流では渇水による被害が発生しやすい状況でした。そのため、ため池を作るなど、排水と利水を両立させるための対策が講じられましたが、根本的な解決には至りませんでした。

一方、利根川沿いでも、利根川東遷事業や増水時の遊水地の役割を果たしていた船着場が明治以降にその役割を終えたこと、明治43年の大水害で治水システムが崩壊したことなどから、水害に悩まされるようになっていました。さらに、大正から昭和にかけての大干魃や洪水により、用排水の必要性が認識され、1935年に野口初太郎が利根川を水源とする利根川引水計画構想を発案しました。これが大利根用水の計画へとつながり、第1次県営大利根用水改良事業として着工しました。

反対運動や戦中戦後の資材不足などの困難を乗り越え、1950年に大利根用水は完成しました。これにより、安定した農業用水が供給されるようになりました。しかし、完成から5年後の1955年には塩害が発生し、被害面積は約3,200町歩に及びました。翌年以降、塩害の被害は拡大し、1958年には約30,000町歩に達しました。このため、関係市町や土地改良区から「潮止め堰建設」の要望が出され、1971年に利根川河口堰が竣工しました。

また、大利根用水の施設は、戦中戦後の資材難の時代に施工されたため、老朽化が著しかったため、1970年から1992年までの23年間をかけて全面的な改修が行われました。これにより、九十九里平野北部の地域への農業用水の安定供給に貢献しています。

関連情報

新川 (千葉県): 椿海の水を排水し干拓した人工河川。
山武郡東部連合耕地整理組合: 大正時代から栗山川西岸で用水事業をしていた耕地整理組合。
昭和33年塩害: 大利根用水完成後に発生した大規模な塩害。
乾草沼: この地域にある沼。

外部リンク

* 水土の歴 - 地域の礎 - 千葉県 大利根用水農業水利事業



大利根用水は、地域の農業を支えるだけでなく、歴史的な背景や水害対策の観点からも重要な役割を担っています。

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