昭和58年台風第10号

昭和58年台風第10号（フォレスト）

1983年9月、日本列島に大きな被害をもたらした台風10号、国際名フォレストは、西日本を中心に記録的な豪雨をもたらした台風です。この台風は、その特徴から「雨台風」とも呼ばれ、特に河川の氾濫による被害が目立ちました。

台風の発生と発達

1983年9月13日9時、トラック島付近で発生した弱い熱帯低気圧は、西北西に進みながら勢力を強め、20日21時にグアム島の南南西約280kmの海上で台風10号に昇格しました。その後も発達を続け、23日9時には中心気圧885hPa、最大風速55m/sという猛烈な勢力に達しました。これは、1951年の統計開始以降、海上において観測された中心気圧としては8番目に低い記録です。

日本への上陸と温帯低気圧への変化

台風10号は、南西諸島から東シナ海を北上し、28日10時20分頃に長崎県長崎市付近に上陸しました。上陸後も勢力は衰えず、各地に大雨をもたらしましたが、同日15時には九州の東で温帯低気圧に変わりました。

台風による影響と被害

台風10号の接近に伴い、西日本付近に停滞していた秋雨前線の活動が活発化し、各地で記録的な大雨となりました。特に長崎市では、台風上陸直後から雨が激しくなり、木曽川本川流域では、数時間にわたり時間雨量30〜40mmの雨が断続的に降り続きました。

この豪雨により、木曽川では愛知県犬山市の観測所で最高水位13.14mを記録するなど、記録的な大洪水が発生しました。特に木曽川中流域に位置する岐阜県美濃加茂市や坂祝町では、300mmを超える大雨に見舞われ、290haが浸水する被害を受けました。

全国では、死者・行方不明者が44人、負傷者が118人に上り、住家の全半壊が640棟、住家の床上・床下浸水は5万6267棟に及びました。また、耕地の流失・埋没・冠水は5651ha、船舶の沈没・流失・破損は26隻に達し、農林水産業の被害額は805億円という甚大なものとなりました。

その他の被害

長野県松本市では、松本電気鉄道（現：アルピコ交通）上高地線で、土砂災害が発生し、新島々駅 - 島々駅間が不通となりました。この区間は、17年前にバスターミナルが移転したことで利用者が少なく、島々駅は無人駅となっていたため、復旧されることなくそのまま廃止されました。

まとめ

昭和58年台風第10号は、西日本に甚大な被害をもたらした「雨台風」でした。特に木曽川流域での洪水被害は深刻で、多数の犠牲者と家屋、農地などに大きな被害をもたらしました。この台風の教訓は、今後の防災対策に活かされるべきでしょう。

参考文献

国立天文台『理科年表 2009年』丸善、2008年11月

外部リンク

デジタル台風：台風198310号（FORREST）- 総合情報（気圧・経路図） - 国立情報学研究所（北本朝展）

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