時岡収次

時岡 収次（ときおか しゅうじ、1903年12月10日 - 1987年10月18日）は、建設業界における指導者であり、同時にスポーツ振興にも情熱を燃やした人物である。

来歴

福井県大飯郡本郷村（現在の、おおい町）で生を受けた。幼少期からの夢であった船員を志し、福井県立小浜水産学校へと進む。1921年3月に同校を卒業後、さらなる学びを求め早稲田大学に進学。大学時代は相撲部に所属し、スポーツにも親しんだ。1928年3月、早稲田大学専門部政治経済学科を修了し、社会人としての第一歩を、現在の飛島建設である飛鳥組で踏み出した。この建設業界への進路選択は、早稲田大学進学前、故郷の小浜線工事に関わっていた飛島組関係者が実家を宿としていたことからの縁が影響したと言われている。飛鳥組時代には、大同電力の寝覚発電所建設工事のような大規模プロジェクトにおいて、長期にわたり現地に常駐し、実務経験を積んだ。

実業家としての歩み

1938年1月、時岡は新進気鋭の建設会社、熊谷組の立ち上げに参画した。創業メンバーの一人として、その経営基盤を築くことに尽力する。社内での地位を確実に高め、1943年には監査役に就任。その後、1949年には主要拠点である東京支店の責任者となり、事業拡大に貢献した。1964年11月には副社長に昇任し、経営の中枢を担うようになる。1969年には営業部門のトップである営業本部長を経て、1971年にはついに代表取締役の座に就き、名実ともに熊谷組の経営を牽引する存在となった。

スポーツ振興への情熱

建設事業での成功を収める傍ら、時岡は社内のスポーツ振興にも並々ならぬ熱意を注いだ。特に、1948年には「若者に夢を持たせたい」という確固たる理念のもと、熊谷組野球部を創設し、その初代部長となった。チームの発展に尽くし、1952年1月からは部長に加え、監督としても采配を振るうようになる。さらに、同年4月からはバスケットボール部の部長と監督も兼任するなど、そのスポーツへの情熱と指導力は多岐にわたった。彼のスポーツ指導者としてのキャリアのハイライトと言えるのが、1957年に開催された第3回世界ノンプロ野球大会である。この大会で全日本代表チームの監督として指揮を執り、世界の舞台で見事、優勝という輝かしい栄誉を掴んだ。

業界内外での活躍と晩年

建設業界の発展にも広く貢献すべく、社外でも精力的に活動した。土木工業協会、電力建設業会では副会長を務めたほか、日本海洋開発建設協会長、日本建設団体連合会副会長（1975年）など、数々の主要団体の要職を歴任し、業界の発展に寄与した。スポーツ振興への情熱は社外にも及び、1982年には日本野球連盟の顧問、そして関東地区連盟の会長を務めるなど、アマチュア野球界全体の発展にも貢献した。

1987年10月18日、83歳でその波乱に満ちた生涯を閉じた。その長年の功績に対し、没後には従四位および勲二等瑞宝章が追贈された。生前にも1974年には勲三等瑞宝章を受章しており、建設業とスポーツ、二つの分野における貢献が高く評価されていたことが伺える。

時岡収次は、熊谷組の発展を牽引した優れた実業家であると同時に、「若者に夢を」という信念のもと、スポーツを通じて多くの人材を育成し、日本のアマチュアスポーツ界にも大きな足跡を残した稀有な人物として記憶されている。

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