普天堡電子楽団

普天堡電子楽団について

普天堡電子楽団は1985年に北朝鮮で誕生し、正式名称は普天堡軽音楽団です。金正日の指示により、1985年6月4日に発足しました。この楽団は、電子楽器を駆使し、北朝鮮という非常に閉鎖的な環境の中で、先鋭的な存在として多くの若者たちに支持されました。そのスタイルは、YMO（イエロー・マジック・オーケストラ）からの影響が指摘されており、現代的なサウンドが特徴です。

「普天堡」という名前は、1937年に金日成が率いた抗日パルチザン部隊が行った襲撃に由来しています。楽団は専属の女性歌手と男性の演奏者で構成され、特にそのパフォーマンスは特異性を持っていました。

2005年頃からは新たに「牡丹峰」や「小白水」、「銀河水」といった名前の女性重唱組が結成され、彼女たちもオリジナル曲や、楽団のセルフカバー、さらには啓蒙期の歌謡などを演奏しています。これらの活動に対しては、保守的な老年層から批判の声もあり、2007年には音楽活動が停滞していると報じられました。

2008年には復活の兆しが見え、新しい楽曲がYouTubeに投稿されるなど、活動の活性化が図られました。2010年には新作のCDも発売されましたが、旺戴山芸術団との合併に伴い事実上解散状態となりました。多くのメンバーは他の楽団に移籍したり、後進の指導に回ったりしています。

とはいえ、2015年3月には「追憶の歌」と題された公演で限定的に再結成され、また同年10月には朝鮮労働党創建70周年を祝う1万名大公演にも出演しました。そしてこの楽団は、1991年9月には日本での公演も行っており、その時期の日朝間の文化交流の一端を担ったことでも知られています。

楽曲の特徴

楽団の楽曲には、金日成や金正日を称えるプロパガンダ的な作品が多く含まれており、具体例としては「金日成大元帥万々歳」や「あなたがいなければ祖国もない」があります。さらに、朝鮮労働党や軍、政治体制を賛美する曲も多く見受けられ、「攻撃戦だ」などの軍歌もカバーされています。

また、朝鮮半島の民謡に加え、日本の「青い山脈」や「津軽海峡・冬景色」などの外来曲のカバーも行っています。1993年には出版された「普天堡電子楽団歌集」によれば、楽曲は創作歌、再形象した歌、映画の歌、民謡など多岐にわたる形式で分類されています。

演奏形態は指揮者が中心に立ち、ギターやベース、ドラムなどが数人ずつ配置され、5人程度のキーボードやエレクトーンが加わります。演奏は主に男性が担当し、コーラスや女性のセクションも存在します。

主なメンバー

数多くの才能あふれるメンバーが在籍しており、金光淑や金貞女、全恵英、玄松月などが名を連ねています。また、牡丹峰楽団の歌手たちも多くの公演に出演しており、楽団を支える重要な存在です。特に玄松月は朝鮮労働党中央委員会のメンバーでもあり、重要な役割を果たしています。

アプローチや音楽スタイルが独特な普天堡電子楽団は、北朝鮮の音楽シーンにおいて重要な存在であり、時代を超えて影響を及ぼし続けています。彼らの音楽は単なるエンターテインメントに留まらず、北朝鮮の文化、政治、歴史を映し出す鏡ともなっています。

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