普請奉行

普請奉行：城郭と都市基盤を支えた技術者集団

普請奉行は、江戸幕府や各地の藩に設置されていた役職で、現代でいう建設大臣や都市整備局長のような役割を担っていました。城郭の築城や改修、石垣の普請、縄張りの設計、水路の整備といった大規模な土木工事を監督する重要な職務を担っていました。単なる工事の監督にとどまらず、都市インフラ整備の責任者として、人々の生活基盤を支える役割を担っていたと言えるでしょう。

江戸幕府における普請奉行

江戸幕府の普請奉行は、芙蓉の間席に属する重要な役職で、従五位下に叙せられる地位でした。別名は御普請奉行と呼ばれ、定員は通常2名程度でした。老中に直接仕え、役高は2000石という高い地位にありました。

普請奉行の職務内容は多岐に渡りました。城郭の石垣や土木工事、縄張りの変更、さらには上水の管理まで、江戸の都市基盤整備に関わるあらゆる業務を監督していました。これは、仏教用語で「大衆に労役に従事してもらう」という意味を持つ「普請」という言葉が示す通り、大規模な人材動員と組織力を必要とするものでした。

役料については、寛文6年（1666年）に500俵と定められましたが、天和2年（1682年）には廃止されました。普請奉行の下には、普請下奉行、改役、普請方といった複数の部署があり、組織的な運営が行われていました。作事奉行、小普請奉行と共に、下三奉行として幕府の重要な役職を担っていました。

各藩における普請奉行

諸藩においても、普請奉行に相当する役職は置かれていましたが、その名称や組織形態は藩によって異なっていました。筑後柳河[[藩]]では「普請役」と呼ばれ、越後長岡藩のように普請奉行を統括する「普請大奉行」という役職を置く藩もありました。

美濃大垣[[藩]]（戸田氏時代）では、普請奉行は3～4名程度の体制で運営されていたと記録されています。このように、幕府と諸藩では、普請奉行の役割や組織、人員規模に違いが見られますが、いずれも城郭や都市基盤整備において重要な役割を担っていたことは共通しています。

普請奉行と関連する事項

普請奉行の業務と密接に関連する制度として、「手伝普請」があります。これは、普請工事の際に、周辺住民や農民などに強制的に労働をさせる制度でした。この制度は、大規模な土木工事を短期間で完了させるために用いられましたが、一方で、住民への負担も大きかったと考えられます。

普請奉行の役割は、単なる工事の監督にとどまらず、時代の変化に合わせた都市計画や防災対策なども考慮する必要がありました。江戸幕府の安定と発展には、普請奉行のような専門的な技術と行政能力を備えた人材が不可欠だったと言えるでしょう。現代の都市開発にも通じる、重要な歴史的役割を担っていたのです。

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