普門暁

普門暁：日本の未来派を彩った画家

普門暁（1896年8月15日-1972年9月28日）は、20世紀前半の日本を代表する未来派画家の一人です。本名は常明。奈良県奈良市に生まれ、東京高等工業学校で建築を学んだ後、川端画学校へ進み日本画の道へ進みました。

若き日の普門は、二科展落選をきっかけに、1920年、未来派美術協会を創設。同協会を事実上牽引する存在となり、来日したロシア・アヴァンギャルドの巨匠、ダヴィッド・ブルリュークやヴィクトール・パリモフらとも交流を深めました。しかし、1922年には協会から除名されています。二科展への出品が可能になったことや、協会運営への関心の低下、そして管理体制の甘さが、除名の要因として考えられます。その後、同協会は木下秀一郎を中心に活動を継続しました。

未来派美術協会除名後、普門は大阪を拠点に活躍の場を広げました。舞台美術やデザインといった分野で才能を発揮し、数々の作品を生み出しました。1937年には日本大学美術科講師に就任、教育者としての顔も持ちました。戦後にはGHQの日本美術顧問に任命され、アメリカへと日本美術を紹介する役割を担いました。日本の美術を世界に発信する重要な役割を果たしたのです。

1972年2月、くも膜下出血で倒れ、大阪暁明館病院に入院。同年9月28日に亡くなりました。

普門暁の作品は、未来派の特徴である動感や光を視覚的に表現した絵画が中心です。未来派の彫刻作品も制作していました。ただし、特に初期の作品には、未来派の理論を十分に理解した上での制作だったか疑問視される点もあります。見様見真似の側面もあったと考えられています。それでも、彼の作品は独特のエネルギーに満ち溢れ、見る者の心を捉えて離しません。

普門暁の芸術的功績は、未来派美術協会の設立という組織的な活動と、多様な分野での活躍、そして日本美術の国際的な発信という点において計り知れません。彼の活動は、現代美術の多様性を理解する上で重要な視点を提供しています。彼の作品は、奈良県立美術館や京都国立近代美術館などに所蔵されています。これらの美術館を訪れ、彼の作品を直接鑑賞することで、その魅力をより深く理解できるでしょう。

関連文献

井関正昭『未来派　イタリア・ロシア・日本』 形文社、2003年
五十殿利治『大正期新興美術運動の研究』 スカイドア、改訂新版1998年

これらの文献は、普門暁の生涯や作品、そして当時の美術界の状況をより詳細に理解する上で役立つでしょう。彼の作品を通して、20世紀前半の日本の美術界、そして未来派という革新的な美術運動の一端に触れることができるのです。彼の残した作品群は、現代美術への深い洞察と、未来派の精神を受け継ぐ貴重な遺産と言えるでしょう。

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