景東府

景東府（けいとうふ）

景東府は、かつて中国に存在した地方行政区画であり、現在の雲南省景東イ族自治県一帯に位置していました。元代から清代にかけてその歴史を刻み、この地域の行政、文化に大きな影響を与えました。

歴史

1331年（元朝の至順2年）、元朝によって景東府が設置されました。これはこの地域が中央政権の統治下に入ったことを意味します。府という行政区分は、州よりも上位の行政区画であり、この地域が重要な拠点とみなされていたことが伺えます。

しかし、1382年（明朝の洪武15年）には、明朝の統治下で景東府は景東州へと降格され、楚雄府の管轄下に置かれることになりました。これは行政上の効率化や、明朝の支配体制の再編によるものと考えられます。

その2年後の1384年（洪武17年）、景東州は再び景東府へと昇格し、雲南省に属することとなりました。この昇格は、この地域の重要性が再認識されたことを示唆しています。この時、陶氏が土司として知府を世襲し、地方行政を担いました。陶氏の土司は、その恭順さから高く評価されていました。土司とは、地方の有力者が世襲的に地方行政を行う制度で、中央政府との関係において重要な役割を果たしました。

1665年（清朝の康熙4年）になると、清朝の政策である改土帰流によって、景東府は土司の支配から離れ、中央から派遣された官僚（流官）によって統治されるようになりました。これは、中央政府の地方統治を強化する意図に基づいたものでした。

1770年（乾隆35年）には、景東府は景東直隷庁と改称されました。直隷庁は、府よりもさらに中央政府の直接的な管轄下にある行政区画であり、景東地域の重要性が増していたことを示唆しています。

清朝が倒れ、中華民国が成立すると、1913年に景東直隷庁は廃止され、景東県へと改められました。これにより、景東地域は新しい時代へと移行することになりました。

まとめ

景東府は、元代から清代にかけて、その行政区分や管轄が変化し、その歴史の中で重要な役割を果たしました。特に、土司制度、改土帰流、行政区画の変遷といった歴史的出来事を通して、中国の地方行政制度の変化を理解する上で重要な地域です。景東府の歴史は、中国の地方史研究において、重要な一例として位置づけられています。

現在では、景東イ族自治県として、その歴史を今に伝えています。

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