景観開花

景観開花。（けいかんかいか。）

「景観開花。」は、東北大学の景観開花。実行委員会が中心となって主催している、土木デザイン分野における独自の設計競技です。2004年の開始以来、毎年秋に宮城県仙台市を舞台に開催されており、地域の景観や土木構造物のあり方に対し、新たな視点からの提案を募る場として定着しています。

この設計競技の大きな特徴は、建築分野では一般的に行われることの多いアイデアコンペティション形式を、土木分野で採用している点にあります。これは土木設計の世界においては珍しい試みであり、構造や機能だけでなく、景観や環境との調和、社会的な意義といったデザイン性を重視した議論を促進することを目指しています。競技は特定のテーマに沿って行われ、参加者はそのテーマに対する独創的なアイデアを提案します。

競技の選考プロセスは段階的に進められます。まず、応募された多数の作品の中から一次審査を通過した数点と、協賛企業による特別賞の候補作品が選ばれます。その後、一般に公開される形での最終審査会が行われ、そこで参加者によるプレゼンテーションと質疑応答を経て、最も優れた提案に最優秀賞1点、次ぐ優秀賞1点、そして数点の佳作が決定されます。

この競技は2004年から16回にわたって継続されましたが、2019年には一度休止期間を挟みました。そして、2020年からは「新・景観開花。」としてリニューアルされ、新たな時代背景や社会課題を踏まえたテーマ設定で再スタートを切っています。例えば、「景観開花。2021」では「Pre-Coastruction」というテーマのもと、津波被害のリスクが予測される沿岸地域において、安全性を確保しつつも地域の魅力を維持・向上させるための土木デザインの可能性が問われました。これは、人口減少時代における海岸空間の新しいあり方を探る重要な問いかけでした。

歴代のテーマには、時代のニーズや土木分野が向き合うべき課題が反映されています。開始当初は『新時代の橋梁デザイン』『新時代の土木構造デザイン』といった土木構造物そのものに焦点を当てたテーマから始まり、『川』『道の駅』『駅と駅との新しいつながり』といった特定の場所や機能に関するもの、さらには東日本大震災以降は『未来へつなぐ防潮堤デザイン』『未来へつなぐ防災まちづくりデザイン』のように防災や復興に関連するものへと広がっていきました。近年では、『集う』『活かす』『相互作用』『新陳代謝』『映える』といった抽象的・社会的なテーマや、『Re:ver. Space』『Multi-funAction』『Nature-based Solution』など、より多角的で環境や社会との関わりを深く問うテーマが設定されています。2024年のテーマは『Oregional Transport Hub ～選ばれる街に求められる交通結節点をデザインせよ～』であり、地域活性化における交通の役割とデザインの重要性を問いかけています。

本競技の審査委員会は、長年にわたり日本の土木デザインを牽引してきた専門家や、建築、ランドスケープ、都市計画、社会学など多分野の識者によって構成されてきました。特に、土木設計家の篠原修氏は、初回から全ての回の審査委員長を務め、本競技の継続と発展に大きく貢献しています。また、建築家の五十嵐太郎氏、西村浩氏、ランドスケープアーキテクトの石川幹子氏、長谷川浩己氏など、様々な視点を持つ専門家が審査に参加することで、多角的な評価が行われています。

「景観開花。」は、若手技術者や学生を含む幅広い層に対し、既成概念にとらわれない自由な発想で土木デザインの可能性を探求する機会を提供しています。土木構造物を単なる機能物としてではなく、地域や人々の生活に深く関わる「景観」を創造する要素として捉え直すことの重要性を提起し、未来の社会基盤整備におけるデザインのあり方について継続的に議論を深める、貴重なプラットフォームとしての役割を果たしています。

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