暗黒星雲のかなたに

暗黒星雲のかなたに

アイザック・アシモフのSFミステリー小説『暗黒星雲のかなたに』は、銀河帝国の黎明期を舞台に、一人の若者の冒険と成長を描いた物語です。トランターが銀河の覇権を握る以前、星雲諸王国が群雄割拠する時代を背景に、主人公バイロン・ファリルが陰謀と策略に巻き込まれていきます。

概要

物語は、地球の大学に通うバイロンが、父の突然の死を知らされる場面から始まります。父は、惑星ネフェロスの領主でありましたが、暴虐なティラン帝国に対する陰謀の疑いで捕えられ、処刑されたというのです。父の死の真相を追うバイロンは、自身の身にも危険が迫っていることを知り、逃亡を決意します。

ティラン帝国は、馬頭星雲付近の50の惑星を支配する強大な勢力です。科学技術を制限し、圧政を敷くティランに対し、星雲諸国の人々は密かに反乱の機会を窺っています。バイロンは、ティランの支配から逃れ、反乱の拠点を探す旅に出ます。

あらすじ

サンダー・ジョンティから父の死を知らされたバイロンは、ローディアへと向かいます。そこで、彼は総督の娘アルテミシア、総督のいとこギルブレットと共にティラニの宇宙船を奪い、リンゲーンを目指します。リンゲーンの大公は反乱軍の星の情報を握っているようでした。大公と共に馬頭星雲の中心部へ向かったバイロンは、そこで驚くべき真実を知ることになります。

ティラニの長官アラタップは、執拗にバイロンを追跡します。大公は実はバイロンの父を陥れた張本人であり、反乱軍の星も存在しないことが判明します。しかし、ギルブレットの捨て身の行動が、事態を打開するきっかけとなります。やがて、反乱軍の星はローディア自身であり、総督が反乱軍の首領であることが明らかになります。

総督は、バイロンの父が探し求めていた古文書、アメリカ合衆国憲法を発見します。この憲法こそが、未来の銀河帝国を築く礎となることを示唆して物語は幕を閉じます。

特徴

本作は、アシモフの作品の中でも初期のものであり、後のファウンデーションシリーズに繋がる世界観の萌芽が見られます。銀河帝国の成立以前の混沌とした時代を描き出し、歴史的背景を巧みに利用したストーリー展開が魅力です。また、アメリカ合衆国憲法が未来の銀河を救うという大胆なアイデアは、読者に深い印象を与えます。

評価

アシモフ自身は、本作をあまり気に入っていなかったようですが、初期の作品としては高く評価されています。想像力豊かな叙述と、サスペンスに満ちた展開は、読者を飽きさせません。ただし、シリーズ全体から見ると、合衆国憲法の位置づけが曖昧になるという指摘もあります。

まとめ

『暗黒星雲のかなたに』は、アシモフのSF作品の中でも異色の作品と言えるかもしれません。銀河帝国の黎明期を舞台に、陰謀、裏切り、そして希望が織りなす物語は、SFファンのみならず、ミステリー好きにもおすすめです。

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