トランター

トランター：銀河帝国の中心から衰退へ

トランターは、アイザック・アシモフのSF小説、ファウンデーションシリーズに登場する惑星であり、銀河帝国の首都として重要な役割を果たしました。銀河系のほぼ中心に位置し、その歴史は帝国の興亡と密接に結びついています。

発展の過程

元々は5つの惑星からなる「トランター共和国」でしたが、その軍事力を背景に勢力を拡大。「トランター連邦」「トランター帝国」へと変貌を遂げ、約500年で銀河系の半分を支配下に置きました。

トランターに対抗する勢力も存在しましたが、高級繊維カートを産出する惑星フロリナの衰退とともに、銀河系全体がトランターの支配下に入り、「銀河帝国」が成立しました。トランターの紋章である「宇宙船と太陽」は、そのまま銀河帝国の象徴として受け継がれました。

繁栄の絶頂

銀河帝国の成立後、トランターは行政センターとしての役割に特化するため、惑星全体が大規模に改造されました。山や川は整地され、皇帝の宮殿周辺を除く全土が金属で覆われました。最盛期には人口が400億人を超え、50の惑星から食料を輸入していましたが、それだけでは足りず、内部でマイクロ栽培による食料生産が行われていました。

エネルギーは地熱を利用していましたが、ダール地区などの低下層労働者が発電施設の運用に従事し、労使間の対立が頻発していました。エネルギー消費によって生じる熱は、惑星全体に突き出た排熱塔や、極地のワイ地区から宇宙へ放出されていました。また、スペーサーの末裔を名乗るマイコゲンなど、異文化を持つ人々も多く存在し、帝国の不安定要素を内包していました。トランターは、銀河系社会の縮図であり、ハリ・セルダンはトランターをモデルケースとして心理歴史学理論を確立しました。

衰退とその後

帝国の弱体化が進む中で、トランターは物理的な繁栄と権力のピークを迎えました。しかし、ハリ・セルダンらは帝国の衰退を予見していました。ファウンデーション設立から2世紀後、トランターは内乱と略奪によって荒廃し、帝国の衰退が明らかになりました。この混乱で多くの人命と設備が失われましたが、銀河帝国図書館は略奪を免れ、知識の集積所としての地位を保ちました。

皇族の一部は惑星デリカッスに逃れ、「ネオトランター」を樹立しましたが、ミュールの侵攻によって滅ぼされました。その後、トランターの人々は、地表を覆っていた金属を売り、農業によって生活するようになりました。かつての帝都の面影はなく、トランターという名前を嫌い、自分たちの世界を「ヘイム」（ホームの訛り）と呼ぶようになりました。

トランター・ノヴェル

アシモフのSF長編『宇宙の小石』『暗黒星雲の彼方に』『宇宙気流』は、トランターが銀河帝国の礎を築きつつあった時代を舞台にしており、「トランター・ノヴェル」として分類されています。

関連項目

* ターミナス

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