暗黒星雲賞

暗黒星雲賞（あんこくせいうんしょう）

暗黒星雲賞は、毎年開催される日本SF大会において、その場に参加した人々の投票によって選出される賞です。

概要と位置づけ

この賞は、「暗黒星雲賞実行委員会」という同好会によって自主的に運営されている企画であり、日本SF大会の公式行事として大会実行委員会が主催しているものではありません。しかし、長年の歴史の中で、事実上は大会の公認企画のような形で多くの参加者に受け入れられています。賞の名称自体が、日本のSF・ファンタジー作品に贈られる「星雲賞」をもじったパロディであることからも、そのユニークな性質がうかがえます。

目的と選考基準

暗黒星雲賞の規約には、「本賞は日本SF大会参加者の投票により、対象が優秀であるかどうかは関係なく、賞を与えたくなったものに与え、SF大会を盛り上げることを目的とする」と明記されています。この言葉の通り、単なる優れた業績や作品を表彰するのではなく、大会期間中に参加者の間で話題になったもの、強い印象を残したもの、多くの共感や笑いを呼んだものなど、その年のSF大会を彩った様々な事柄が受賞対象となります。目的はあくまで大会を盛り上げることであり、選考基準は「面白かったか」「心に残ったか」「賞を与えたくなったか」といった、参加者の主観的な評価に重きが置かれています。

部門構成

賞には原則として以下の5つの部門が設けられています。ただし、その年の大会の特徴や出来事に応じて、暗黒星雲賞実行委員長が部門を増やしたり減らしたりすることもあります。

企画部門
ゲスト部門
コスチューム部門
自由部門
* 幸運部門

多様な受賞対象

受賞するのは、SF大会の参加者やゲスト、大会を支えた関係者など、人物であることが多いですが、それだけにとどまりません。過去には、開会式で参加者全員の前でプロポーズを成功させた人物や、SF大会の会場となったホテルや旅館で参加者に対して非常に丁寧な対応をした支配人や女将が感謝の意を込めて受賞した例があります。また、予期せぬ自然現象や突発的な出来事も受賞対象となることがあります。例えば、大会期間中に記録的な豪雨が降った年には「雨」が、大型台風が接近した年には「台風12号」がそれぞれ自由部門を受賞しています。

さらに、大会の進行上の問題点や失敗が皮肉を込めて受賞に至ることもあります。制作が間に合わず結局上映されなかったオープニングムービーや、大会運営の手際が悪かった際にその年のSF大会実行委員会自体が受賞したという異色の事例も存在します。

ユニークなケースとしては、暗黒星雲賞そのものが次点に挙げられたり、暗黒星雲賞の20周年を記念した企画が企画部門を受賞したりと、自己言及的な受賞例も見られます。

投票システム

投票は日本SF大会の参加者であれば誰でも行うことができます。規約により、1人の参加者は1部門につき1票を投じることができます。つまり、その年の部門数に応じて、参加者は複数の部門に投票権を持つことになります。投票用紙には投票者の氏名と大会参加登録番号の記入が必須であり、無記名の票は無効とされます。組織票も認められていますが、その場合は賞状に組織票による受賞である旨が明記されます。

幸運部門に関しては、他の部門とは異なり、投票内容の評価ではなく、その部門に投票した有効票の中から無作為に抽選で受賞者が選ばれるという特殊な方式が採用されています。

授与品と副賞

受賞者には、栄誉を称える賞状が贈られると共に、独特の副賞が授与されます。副賞の選定は、暗黒星雲賞実行委員長の一存で決定されます。規約には副賞は「何か変なもの」であるべしとされており、その内容は毎年大きな注目を集めます。過去の例としては、名古屋で開催された大会では名古屋名物にちなんだ「食品サンプルのエビフライが吊られたネックレス」が、横浜で開催された際には童謡「赤い靴」にちなんで「女児用の赤い靴」が副賞として贈られています。その意図不明ながらもインパクトのある副賞は、受賞者だけでなく大会参加者全体に楽しさを提供しています。

SFファンダムにおける評価

日本SF大会の歴史と共に歩んできた暗黒星雲賞は、SFファンダムの間で広く認知されています。2015年には、SF評論家であり長年SF界に貢献してきた柴野拓美氏の名を冠した「柴野拓美章」が新たに創設された際、その最初の受賞者として「暗黒星雲賞主催者（暗黒星雲賞実行委員会委員長）」が選ばれたことは、SF界における暗黒星雲賞の存在感と貢献を示す出来事と言えるでしょう。

暗黒星雲賞は、形式ばった評価ではなく、参加者の熱意とユーモアが生み出す、文字通り「日本SF大会を盛り上げる」ための祭典であり、毎年夏のSF大会に欠かせない名物となっています。

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