暗黒街の女 (1958年の映画)

『暗黒街の女』（原題：Party Girl）は、1958年に公開されたアメリカの犯罪恋愛映画です。巨匠ニコラス・レイが監督を務め、彼のハリウッドでの最後の作品となりました。フィルム・ノワールとしては珍しいカラー作品で、1930年代初頭のシカゴを舞台に、暗黒街で生きる人々の愛と裏切り、そして運命を描いています。

物語は、暗黒街のボスであるリコ・アンジェロの顧問弁護士を務めるトミー・ファーレルが、リコの経営するキャバレーで働く踊り子ヴィッキー・ゲイと出会うところから始まります。二人はすぐに惹かれ合い、愛し合うようになります。トミーはヴィッキーとの愛を深めるにつれて、リコの犯罪組織から抜け出したいと願うようになります。しかし、リコはトミーを逃がすことを許さず、ヴィッキーを人質にトミーを脅迫し、新たな仲間であるギャング、クッキー・ラモッテの弁護を強要します。クッキーは陪審員を買収していたことが発覚し、リコは彼と仲間たちを始末します。トミーは愛するヴィッキーと共に逃亡を試みますが、警察に逮捕されてしまいます。トミーはリコの犯罪を証言することを拒否し続けますが、ヴィッキーの説得と州検事スチュワートの一計によって、ついにリコの犯罪を告白することを決意します。トミーは釈放されるものの、リコをおびき出すために、自ら囮となる道を選びます。そして、警察の手引きで逃がされていたはずのヴィッキーが、リコに捕らえられていることを知ったトミーは、単身で彼女を救出に向かいます。リコはヴィッキーに硫酸をかけようとしますが、トミーが得意の弁舌で時間を稼ぎます。そこへ警察が到着し、リコは誤って硫酸を浴びて命を落とします。この物語は、暗黒街の非情さと、そこで生きる人々の愛と苦悩を鮮烈に描いています。

主な登場人物は以下の通りです。

トーマス（トミー）・ファーレル: ロバート・テイラーが演じる主人公。リコの顧問弁護士で、子供の頃の怪我が原因で左足が不自由です。正義感と愛に生きる人物として描かれています。
ヴィッキー・ゲイ: シド・チャリシーが演じるヒロイン。リコのキャバレーで働く踊り子で、トミーと愛し合うようになります。彼女の存在がトミーの運命を大きく左右します。
リコ・アンジェロ: リー・J・コッブが演じる暗黒街のボス。冷酷で残忍な性格であり、女優ジーン・ハーロウの熱狂的なファンです。彼の存在が物語を大きく動かします。
ルイ（ラッキー・ルーイー）・カネット: ジョン・アイアランドが演じるリコの子分。殺人容疑で起訴されていましたが、トミーの弁護で無罪となります。
ジェフリー・スチュワート: ケント・スミス演じる州検事。マフィア特別捜査官でもあり、上院議員を目指しています。トミーの協力を得てリコの犯罪を暴こうとします。
ジェヌヴィエーヴ: クレア・ケリーが演じるトミーの別居中の妻。離婚に応じようとしないため、トミーを悩ませます。
* クッキー・ラモッテ: コリー・アレンが演じるリコの新しい相棒のギャング。凶暴で残忍な殺人鬼として描かれています。

『暗黒街の女』は、その映像美とドラマチックな展開で観客を魅了し、フィルム・ノワールの傑作として高く評価されています。ニコラス・レイ監督の卓越した演出と、ロバート・テイラーとシド・チャリシーの名演が光る一作です。なお、1928年のアメリカ映画『暗黒街の女』（原題：Ladies of the Mob）とは無関係です。

この映画は、当時の社会情勢や人間関係を背景に、欲望や愛情、裏切りが複雑に絡み合う人間ドラマを描き出しています。また、カラー作品であることによって、登場人物たちの感情や物語の雰囲気がより鮮明に表現されている点も特徴です。映画ファンならずとも、見応えのある作品です。

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