暴力教室 (1976年の映画)

暴力教室：社会現象と若き才能のぶつかり合い

1976年、東映東京撮影所で製作された『暴力教室』は、社会問題化していた校内暴力と、若き松田優作とクールスの共演で注目を集めた青春映画です。監督は岡本明久。松田優作にとって本格的なアクションに挑戦した記念碑的作品であり、舘ひろしは本作で映画デビューを果たしました。

複雑な背景と設定

本作の企画は、当時の東映社長・岡田茂からの指示によるものでした。アメリカ映画『暴力教室』を参考に、高校生によるバイオレンスを描いた作品を作るというものでした。当初は千葉真一主演で企画が進められていましたが、スケジュールの都合で松田優作が抜擢されることになります。しかし、松田は直前に暴力事件を起こして謹慎中だったため、このキャスティングは大きなリスクを伴うものでした。

この状況下で、謹慎中の松田と、本物の不良グループであるクールスを「はみ出し教師役と不良生徒役」として対決させるという、大胆な設定が採用されました。クールスはバイクチームでありながらロックバンドとしても活動しており、そのメンバーの多くが本作に出演しています。クールスのサブリーダーである岩城滉一は、本作とは別に同時上映された『暴走の季節』で主演を務めていました。

ストーリー：暴力と抗争の渦中

名門私立高校・愛徳学園高校に赴任した体育教師・溝口（松田優作）は、非行少年グループが跋扈する学校の実態を目の当たりにします。溝口は、そのグループのリーダー・喜多条（舘ひろし）のクラス担任となり、彼らと対立することになります。

溝口は生徒たちを厳しく指導しますが、喜多条たちは授業を抜け出し、校内外で様々な問題を起こします。一方、学園の理事長と校長は、学園の移転に伴う土地売却で巨額の利益を得ようという不正を企てており、その陰謀に巻き込まれた理事長の娘・ますみは、グループに身を落としていきます。

溝口は、ますみの写真を使って理事長を脅迫しようとするグループと対決。その過程で、溝口自身の過去（元プロボクサーでリング上で相手を死なせてしまった経験）も明らかになり、喜多条との対立は深まります。溝口は妹を犯されたことに激昂し、学校で喜多条に鉄拳制裁を加えます。しかし、そのことで溝口は謹慎処分となり、喜多条は退学処分となります。

その後も、学園内では様々な抗争が繰り広げられます。数学教師がクールスのバイクを壊したことで報復を受けたり、生徒会長率いる体育会系の生徒たちが、クールスに対抗する親衛隊組織を結成するなど、学校全体が暴力と抗争の渦に巻き込まれていきます。女教師・花房は学園幹部の不正を暴こうとしますが、仲間からは相手にされず、溝口に協力を求めます。しかし、花房と溝口の妹は襲われ、妹は命を落としてしまうのです。

最終的に、花房と妹を襲ったのは体育会系のグループであり、その黒幕は理事長たちであったことが判明します。溝口は単身で学園に乗り込み、理事長たちの不正を暴こうとします。激しい乱闘の末、溝口と喜多条は、共に警察に連行されていきます。

キャストとスタッフ

本作には、松田優作と舘ひろし以外にも、安西マリア、南条弘二、結城なほ子など、多くの個性的な俳優たちが脇を固めています。音楽は菊池俊輔が担当し、クールスが主題歌「恋のテディー・ボーイ」を歌っています。

作品の評価と影響

『暴力教室』は、公開当時大きな話題を呼び、興行成績も好調でした。松田優作のカリスマ性と、クールスの存在感、そして70年代東映特有の作劇法が融合した作品として高い評価を受けています。また、不良教師と生徒の対立という設定は、後の学園ドラマにも影響を与えたと考えられています。

本作は、社会問題としての校内暴力、若者たちの葛藤、そして大人の不正といった様々な要素を複雑に織り交ぜた、70年代東映映画を代表する問題作です。松田優作と舘ひろしという、当時最も注目を集めていた若手俳優たちの共演も大きな魅力となっています。

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