曙事件

曙事件（あけぼのじけん）

曙事件は、1952年7月30日に山梨県南巨摩郡曙村で発生した深刻なテロ事件です。この村は、歴史的な平家の落人伝説がある貧しい地域でありながら、資産家のS氏が影響力を持ち続けていました。特に農地改革後も、彼は山林の地主として地元における存在感を誇示していました。

事件の発端

当時、日本共産党（所感派）は1951年に新たな綱領と軍事方針を決定し、武装闘争を活発に展開していました。この流れの中、曙村にも「山村工作隊」が派遣され、地主からの山林の解放を目指して活動を開始しました。彼らは「Sを人民裁判にかけ、財産を村民に分配する」とのスローガンを掲げ、地域でオルグ活動を行っていました。しかし、S氏は山林の開放を強く拒否しました。

事件の概要

1952年7月30日の夜、約10人の山村工作隊が武器を手にS氏の自宅に押し入ります。彼は就寝中であり、襲撃を受けた結果、S氏や彼の妻、家政婦、さらには小学生3人が棍棒で殴られ、冷水を頭から浴びせられるなどの暴行を受け、重傷を負いました。加えて、家財道具が破壊され、現金4,860円と籾1俵が強奪されました。

この暴力行為は強盗致傷事件として扱われ、警察は捜査に乗り出し、山狩りを行った結果、共産党員を含む8人が逮捕されました。

その後の顛末

逮捕された被疑者たちは、公判において自らの行為の正当性を力説しました。1964年1月20日には、日本の最高裁判所が彼らに対して懲役2年から8年の有罪判決を下しました。

この事件は波紋を呼び、日本共産党は菅生事件と同様の公安警察による謀略と位置づけており、事件発生50周年を記念したパンフレットでもその主張を展開しました。しかし、兵本達吉などの批判者たちは、山村工作隊の武装闘争路線がこのような政治的テロを生み出した原因の一つと指摘しています。

参考文献

• - 兵本達吉『日本共産党の戦後秘史』新潮社、2008年。
• - 立花書房 編『新 警備用語辞典』立花書房、2009年。
• - 警備研究会 編『わかりやすい極左・右翼・日本共産党用語集』5訂版、立花書房、2017年。

関連項目

• - 国家地方警察山梨県本部
• - リンチ
• - 山村工作隊
• - 犯罪被害者

曙事件は日本の政治史における重要なエピソードとして今日に至るまで語り継がれています。

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