兵本達吉

兵本達吉の生涯と業績

兵本達吉（ひょうもとたつきち）は1938年に奈良市で生まれた日本の政治評論家であり、元国会議員秘書である。彼は自らを「共産主義研究家」と名乗り、日本の政治や社会問題に関する発言で注目を集めてきた。

幼少期と学業

兵本の実家は奈良県の地主で、かつては稲作で財を築いていたが、昭和恐慌の波で家計が悪化し、その後は養蚕業に転換した。幼少期から空手道を学び、高校時代には歴史学に興味を持つ一方で、なかなかマルクス主義には関心を示さなかった。しかし、1960年の安保闘争を機にマルクスの思想に触れ、次第にその影響を受け始めた。

彼は京都大学法学部に進学し、ドイツ刑法を学びながら日本共産党に入党。大学生活の中で、政治活動への参加が彼の人生の大きな転機となった。卒業を目前に中退し、共産党の専従としての活動を開始した。

政治活動の経歴

兵本は、安保闘争の時期には積極的にオルグ活動を行い、地方組織で中央批判の論文を書いて高く評価された。その後、1978年には国会議員公設秘書に就任し、ロッキード事件やリクルート事件の真相究明に取り組む。

1987年11月に発生した大韓航空機爆破事件を契機に、北朝鮮における拉致問題を重要視し始める。彼は北朝鮮の拉致問題に関して徹底的な調査を行い、日本国内での拉致問題に対する関心を高めることに貢献した。

特に1988年3月26日の参議院予算委員会において、橋本敦議員が北朝鮮の関与を認める「梶山答弁」を引き出すための質問原稿を作成したことは、拉致問題に対する重要な進展とされている。この質問は、拉致問題が日本の政治において更に取り上げられるきっかけとなった。

日本共産党からの除名

兵本は、1998年に日本共産党から除名される。除名の理由は、公安警察の関係者への再就職先斡旋の依頼とされたが、兵本自身はそれを否定し、共産党の対応に対して強い不満を表明した。彼は新たに北朝鮮の拉致問題に関して、更に声を上げるようになり、被害者家族への支援活動に尽力した。

拉致問題への取り組み

兵本は1997年に北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の結成にも関与し、「救う会」の幹事に名を連ねた。彼は、拉致問題を解決するために活動を続け、他のメディアとも連携しながら情報収集を行った。彼の情熱は、次第に家族会結成につながることとなった。

その後の活動

2004年には、救う会において会長が寄付金を着服した疑惑を告発。これが物議を醸すこととなり、彼は救う会の理事を解任された。その後も一会員として活動を続け、拉致問題への関心を持ち続けた。

人物像と著述活動

兵本は公に目立たない生活を送っていたが、彼の言葉には強い信念が込められていた。彼は、さまざまなメディアに対して意見を述べ、『WiLL』や『正論』などに論文を投稿してきた。また、著書『日本共産党の戦後秘史』を出版し、自身の信念や共産党についての見解を示している。

兵本達吉は、北朝鮮による日本人拉致問題における重要な活動家の一人として、日本の政治に強い影響を与え続けてきた。

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