曹候補士

曹候補士（そうこうほし）

曹候補士とは、かつて陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に存在した、将来曹（旧軍や外国軍における下士官に相当）になるための訓練を受ける非任期制の隊員のことです。略称は「補士」と呼ばれていました。

制度の趣旨

曹候補士制度は、当時の自衛隊における隊員募集の課題を解決するために創設されました。それまで、自衛官の募集は、任期制の2士（二等陸士、二等海士、二等空士）と、非任期制の一般曹候補学生に限られていました。一般曹候補学生は採用後2年で曹に昇任するため、採用人数が限られ、士としての継続的な部隊勤務が期待できませんでした。一方、任期制2士は曹への昇任が難しく、任期満了で離職するケースが多くありました。

そこで、離職率を抑えつつ、士として一定期間部隊勤務を行い、将来的に曹への昇任を保証することで身分を安定させることを目的として、曹候補士制度が平成2年に発足しました。

しかし、非任期制としたことで、任期満了に伴う満期金（退職金）が支給されないというデメリットがありました。そのため、曹に昇任できずに除隊する隊員にとっては不利な制度でした。

制度開始当初は、曹への昇任が保証されていましたが、制度後期になると、昇任試験の平均点が一般隊員よりも悪化するなど、制度の存在意義が問われるようになりました。また、任期制隊員からの曹への昇任枠がさらに狭まったため、結果として、任期制隊員出身の曹が活躍する傾向が見られるようになりました。

このような状況から、平成18年度募集（平成19年度入隊者）をもって曹候補士制度は廃止され、一般曹候補学生制度と統合され、新たに「一般曹候補生」制度が発足しました。一般曹候補生は、曹候補士とは異なり、自動的に曹に昇任できるわけではなく、昇任の見込みがなければ資格を失う場合があります。

人事運用

曹候補士は、採用後、2士、1士、士長と昇任し、最短で2年3ヶ月で3曹に昇任します。しかし、昇任には個人差があり、10年近く昇任できない隊員もいました。

陸上自衛隊では、入隊後7年で無条件に3曹に昇任できる制度がありましたが、平成11年度に廃止されました。陸曹候補生課程に入校できない場合や、入校後に心身の故障などで初級陸曹としての水準に達しないと判断された場合は、陸曹候補者き章の返納を求められ、退職を勧められることがありました。その後、海上自衛隊と航空自衛隊でも同様の無条件昇任制度は廃止されました。

3曹に昇任後、4年の実務経験を積むと、幹部候補生部内選抜試験の受験資格が得られます。

服制

曹候補士は、任期制隊員と同様の制服を着用し、左腕に「陸曹候補者き章（乙）」、「海曹候補者き章（乙）」または「空曹候補者き章（乙）」を装着します。これらのき章は、陸上自衛隊と海上自衛隊では金色の、航空自衛隊では銀色の桜花を浮き彫りにした金属製で、布製の円形の台地が付いています。

注釈

曹候補士制度は、隊員の身分安定を図るという目的で創設されましたが、制度の運用上、様々な問題点が明らかになり、最終的に廃止されることとなりました。しかし、この制度は、自衛隊の人事制度を考える上で重要な教訓を残しました。

関連項目

自衛官
陸曹候補生
内務班
幹部自衛官・下士官
制服 (自衛隊)
自衛隊の階級

もう一度検索