陸曹候補生

陸曹候補生とは

陸曹候補生とは、陸上自衛隊において、将来的に陸曹（3等陸曹）となることを目指す隊員のことです。具体的には、陸士長の中から選抜され、初級陸曹としての教育を受ける者のことを指します。陸曹候補生は、自衛官候補生や一般曹候補生といった採用区分から選ばれ、それぞれの過程を経て陸曹候補生に指定されます。

陸曹候補生の概要

陸曹候補生は、陸士長として一定期間勤務し、部隊で実施される選抜試験に合格することで、その資格を得ます。この選抜試験は、日々の勤務成績だけでなく、体力や知識も評価の対象となります。選抜試験に合格した陸士長は、陸曹候補生として教育を受けることになります。

陸曹候補生には、以下の2つの区分があります。

自衛官候補生採用の陸士長：約1年以上の勤務を経て選抜試験に合格すると、「陸曹候補者き章（乙）」を着用します。
一般曹候補生採用の陸士長：約1年以上の勤務を経て選抜試験に合格し、陸曹教育隊への入校が確定した時点で、「陸曹候補者き章（甲）」を着用します。

かつては旧制度として、旧一般曹候補学生と旧曹候補士という区分がありましたが、現在は統合されています。

陸曹候補生に指定されると、所属部隊における陸士の最上位者となり、選抜試験に合格しなかった先輩の陸士長よりも序列が上位となることがあります。

陸曹候補者き章について

陸曹候補生は、教育期間中、以下のいずれかの「陸曹候補者き章」を着用します。

陸曹候補者き章（乙）
特徴：金色の桜花を浮き彫りにした金属製で、布製の円型台地付き
着用位置：制服の腕部
対象者：自衛官候補生採用の陸士長で、選抜試験に合格し、陸曹候補生に指定された者
陸曹候補者き章（甲）
特徴：金色の桜花を浮き彫りにした金属製で、ネジ式の留め具付き
着用位置：制服の襟
対象者：一般曹候補生採用の陸士長で、選抜試験に合格し、陸曹候補生に指定された者、高等工科学校生徒採用の陸士長で、卒業後に陸曹候補生に指定された者

かつての旧制度では、旧曹候補士は陸曹候補者き章（乙）、旧一般曹候補学生は陸曹候補者き章（甲）を着用していました。

教育体系

陸曹候補生に指定されると、まず所属部隊で2～4週間程度の履修前教育を受けます。その後、各方面隊管轄下の陸曹教育隊で約3ヶ月の陸曹候補生課程を受け、初級陸曹として必要な共通的知識と技能を習得します。さらに、各職種ごとの学校で約3ヶ月の初級陸曹特技課程を受け、専門的知識と技能を学びます。これらの課程を修了後、3等陸曹に昇任します。

陸曹教育隊は、各方面隊ごとに設置されており、教育内容は共通ですが、場所や担当する職種が異なります。例えば、普通科は各陸曹教育隊の普通科教育中隊、野戦特科は第1、第2、第5陸曹教育隊の特科教育中隊で教育を受けます。

陸曹教育隊の入校区分は以下の通りです。

北部方面隊：北部方面混成団第1陸曹教育隊（東千歳駐屯地）
東北方面隊：東北方面混成団第2陸曹教育隊（仙台駐屯地）
東部方面隊：東部方面混成団第3陸曹教育隊（板妻駐屯地）
中部方面隊：中部方面混成団第4陸曹教育隊（大津駐屯地）
西部方面隊：西部方面混成団第5陸曹教育隊（久留米駐屯地）
女子：東部方面混成団女性自衛官教育隊（朝霞駐屯地）

初級陸曹特技課程の教育を担当する主な職種学校は以下の通りです。

機甲科：陸上自衛隊富士学校
高射特科：陸上自衛隊高射学校
情報科：陸上自衛隊情報学校
航空科：陸上自衛隊航空学校
施設科：陸上自衛隊施設学校
通信科：陸上自衛隊通信学校
武器科：陸上自衛隊武器学校
需品科：陸上自衛隊需品学校
輸送科：陸上自衛隊輸送学校
会計科・警務科：陸上自衛隊小平学校
衛生科：陸上自衛隊衛生学校
化学科：陸上自衛隊化学学校
* 音楽科：中央音楽隊

旧制度との比較

以前は、旧曹候補士と旧一般曹候補学生という2つの採用区分がありましたが、現在は統合され、一般曹候補生制度となっています。旧制度では、選抜試験の内容や教育課程が異なりましたが、現在の制度では、より公平な評価と教育が目指されています。

また、高等工科学校卒業生を対象とした生徒陸曹候補生課程が新設され、教育体系が拡充されています。

人事運用

陸曹候補生は、指定を受けてから1年以内に陸曹候補生課程を修了し、昇任試験に合格する必要があります。心身の故障や、陸曹候補生としてふさわしくない行為があった場合には、指定が取り消されることもあります。

陸曹候補生課程の成績は、1等陸曹への昇任にも影響するため、教育期間中は高い意識を持って訓練に臨む必要があります。昇任年数は、最短で10年、最長で30年と幅があり、個人の成績によって大きく異なります。

表彰

各課程において、優秀な成績を収めた陸曹候補生は表彰されます。表彰の種類は、方面総監賞、方面混成団長賞、陸曹教育隊長賞、中隊長賞、区隊長賞などがあります。また、初級陸曹特技課程でも、学校長賞や教育部長賞などが授与されます。

まとめ

陸曹候補生は、陸上自衛隊において重要な役割を担う人材です。厳しい選抜試験と教育課程を経て、陸曹として活躍する道が開かれます。陸曹候補生制度は、常に変化を続け、より質の高い人材育成を目指しています。

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