曽我部清典

日本の音楽界で、トランペット奏者として独特の存在感を放つ曽我部清典（そかべ きよのり）は、1952年に愛媛県宇摩郡土居村（現在の四国中央市）に生まれました。

愛媛県立新居浜西高等学校を卒業後、東京芸術大学音楽学部器楽科に進み、トランペットを中山富士雄氏、北村源三氏、永田粋睦氏らに師事しました。現在は埼玉県吉川市を拠点に活動しています。

大学在学中から、作曲家・近藤譲氏が率いる現代音楽アンサンブル「ムジカ・プラクティカ」に参加し、国内外の新しい作品を100曲以上初演するなど、現代音楽の紹介と普及に初期から深く関わりました。この経験は、その後の演奏活動の基盤となります。

1994年には大阪で、日本人トランペット奏者として初めて、プログラム全てを現代作品で構成したリサイタルを開催し、注目を集めました。この試みは国内外で展開され、2001年にはヨーロッパ各地でもソロリサイタルを実施しました。また、1996年からは毎年夏に故郷である愛媛県でリサイタルを開催し続けており、地元への貢献も行っています。

ALMレコードからは、「今日までそして明日から」「透明な孤独」「トキノコダマ」「トキノコダマ2」の4枚のCDをリリースしており、ここには近藤譲氏や武満徹氏、中川俊郎氏、ジョン・ケージ氏といった、国内外の著名な作曲家による多様な作品が収められています。

現代音楽のスペシャリストとして活動する傍ら、金管アンサンブル「上野の森ブラス」（現在は主に金管五重奏）のコンサートマスターとしても積極的に演奏活動を行っています。上野の森ブラスとしては、LP1枚とCD4枚をリリースしており、さらに中東、アフリカ、フランス、ロシアなど、海外での公演も数多く実施しています。特に2007年には、パリでエプシロンアンサンブルとの共演や単独公演を行いました。

教育者としても熱心で、洗足学園音楽大学で講師を務め、後進の指導にあたっています。また、合宿形式のワークショップ「トランペット未来塾」を各地で開催し、若い演奏家の育成に尽力しています。さらに、インターネット上では「ebakos（エバコス）」という名義で、奏法などに関する相談に応じており、オンラインでの音楽教育にも取り組んでいます。

2005年には、中川俊郎氏（作曲家）、松平敬氏（声楽家）とともに結成した「双子座三重奏団」での活動も注目を集めました。

2007年11月時点では、上野の森ブラスのコンサートマスターのほか、ブラスエクストリームトウキョウ（代表も兼務）、アンサンブルコンテンポラリーα、東京現代アンサンブルCOMeT、双子座三重奏団といった複数の団体に所属し、精力的に活動していました。また、日本トランペット協会の常任理事も務めています。

曽我部氏の楽器への探求心も特筆されます。B♭管はヤマハ・Xenoを基にした改良モデルを使用し、ピッコロトランペットでは木製ベルのものも試すなど、多様な楽器への関心を示しています。中でも最も知られているのは、自身が発案し「Zephyros（ゼフュロス）」と名付けたスライド付きピストン・トランペットです。YAMAHAをはじめ、国内外の複数の楽器メーカーと協力して開発・改良を重ねており、この楽器のために多くの作曲家が作品を寄せています。マウスピースはBEST BRASS社製の曽我部清典モデルを使用しています。

また、BEST BRASS社の濱永晋二氏と共同で、音程の良いワウワウミュートを開発しましたが、曽我部氏自身はこれを単なる消音器ではなく、音色を自在に変化させる道具として「サウンド・トランスフォーマー」と呼ぶことを提案しています。これらの活動からも、単なる演奏にとどまらない、楽器そのものや音色への深い探求が見て取れます。

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