曽根崎川

曽根崎川：大阪の街を彩った消えた川

曽根崎川は、かつて大阪府大阪市北区と福島区を流れていた河川です。蜆川（しじみがわ）という別名でも知られていました。堂島川の支流として、堂島川の水晶橋から大江橋の間より北へ分岐し、西へ流れていました。その流路は、現在の北新地の繁華街、ほたるまち、関西電力病院の北側などを通り、堂島大橋と船津橋の間で堂島川に再び合流するというものでした。

蜆川という名の由来

なぜ蜆川と呼ばれたのかについては、二つの説があります。一つは、この川で多くの蜆が採れたことに由来するという説です。もう一つは、何度も改修が繰り返された結果、川幅が狭くなったことから「ちぢみ川」と呼ばれ、それが転訛したという説です。いずれの説も、かつての曽根崎川の豊かな自然環境や歴史的な変化を物語っています。

近世の開発と繁栄

曽根崎川の河川改修は、貞享・元禄年間（1684～1704年）に河村瑞賢によって行われました。この改修を機に、1685年（貞享2年）には左岸に堂島新地、1708年（宝永5年）には右岸に曽根崎新地が開かれ、米市場や歓楽街として発展しました。近松門左衛門の代表作である『曾根崎心中』や『心中天網島』にも登場するなど、当時の大阪の文化や社会生活において重要な役割を果たしていたことが伺えます。これらの作品は、曽根崎川周辺の賑わいある様子を、後世に伝える貴重な資料となっています。

消滅

しかし、曽根崎川はその後、消滅という運命を辿ります。1909年（明治42年）に発生した北の大火（天満焼け）では、瓦礫の廃棄場所として利用され、緑橋（梅田入堀川）より上流側は埋め立てられました。そして、1924年（大正13年）には下流側も埋め立てられ、完全に姿を消しました。かつて賑わいを見せていた曽根崎川は、近代化の波の中で、その姿を歴史の中に閉じ込めたのです。

かつて架かっていた橋

曽根崎川には、多くの橋が架けられていました。上流から順に、難波小橋、蜆橋、曽根崎橋、桜橋、助成橋、緑橋、梅田橋、浄正橋、汐津橋、堂島小橋などです。これらの橋は、人々の生活を支え、曽根崎川の両岸を繋ぐ重要な役割を担っていました。現在では、これらの橋は存在しませんが、当時の面影を偲ばせる地名や遺構が残っているかもしれません。

曽根崎川の現在

現在、曽根崎川は地表には存在しませんが、その歴史は、大阪の街の歴史と深く関わっています。北新地やほたるまちといった地域の発展、近松門左衛門の戯曲など、様々な形でその存在は記憶されています。かつての賑わいを知る人々にとって、曽根崎川は、忘れがたい場所として、今も記憶に生き続けていることでしょう。また、近代都市開発における河川の埋め立てという歴史の一面を、私たちに伝えていると言えるでしょう。

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