曽根英二

曽根英二

曽根 英二（そね えいじ、1949年生まれ）は、日本のジャーナリストであり、現在は阪南大学の教授を務めています。兵庫県で育ち、早稲田大学教育学部を卒業した後、1974年にRSK山陽放送に入社しました。当初はアナウンサーとして活動していましたが、後に報道部記者に転じ、そのキャリアの中心を報道に据えることになります。

ジャーナリストとしての曽根氏の初期の重要な仕事の一つに、1980年から1984年にかけてのJNNカイロ特派員としての活動があります。この期間、中東情勢の最前線で、イラン・イラク戦争をはじめとする紛争の取材にあたり、国際的な視点から報道を展開しました。

帰国後、国内の社会問題に深く切り込む取材を開始します。特に、香川県の離島である豊島（てしま）で発生した産業廃棄物の不法投棄問題に関する報道は、彼のジャーナリスト人生における大きな転機となりました。1990年から始まったこの問題の取材は長期にわたり、廃棄物の撤去や住民の闘いを追い続けました。その粘り強い報道姿勢は高く評価され、1997年には弁護士の中坊公平氏と共に菊池寛賞を受賞するという栄誉に輝きました。豊島問題に関するドキュメンタリー作品は多数制作され、「豊かの島のゴミ騒動」「三たび殺られた」「ゴミの島から民主主義」「島の墓標」など、その多くが「地方の時代映像祭」や民放連盟賞などで受賞を果たしています。この豊島報道は、JNNの「筑紫哲也NEWS23」でも15回以上にわたり特集されるなど、全国的な関心を集めました。

豊島問題と並行して、曽根氏は様々な社会の歪みや弱者に焦点を当てた取材を続けてきました。読み書きや手話ができない聾唖者の窃盗裁判を継続的に取材したドキュメンタリー「おっちゃんの裁判」「じいちゃんになってしまう」「生涯被告」は、「地方の時代映像祭」などで高い評価を得ています。また、瀬戸内海の環境問題や、外国人労働者問題、終戦50年企画、環境ホルモン問題、北朝鮮、特攻の妻など、幅広いテーマで精力的に取材活動を行いました。

特に、2007年から継続的に取材している「限界集落」の問題は、彼のライフワークの一つとなっています。過疎化が進む地方の現実を克明に描き出した著作『限界集落 吾の村なれば』は、2010年に毎日出版文化賞を受賞し、大きな反響を呼びました。

RSK山陽放送では、報道記者、特派員としてだけでなく、報道部長、報道局次長、報道制作局長代理など、報道部門の要職を歴任し、後進の指導や番組制作にも深く関わりました。

1997年からは、阪南大学国際コミュニケーション学部の教授として教壇に立ち、ジャーナリズムの経験や知見を学生たちに伝えています。教育者としても、社会問題に関心を持ち、自ら取材し発信する人材の育成に力を入れています。

曽根氏は、イラン・イラク戦争、レバノン戦争、湾岸戦争（イスラエル）など、複数の戦争・紛争地帯での取材経験も豊富です。その取材対象は、国際情勢から地域の環境問題、個人の尊厳に関わる裁判、そして過疎化といった身近な社会問題まで多岐にわたります。長期にわたり一つのテーマを追い続ける粘り強さと、社会の片隅に追いやられがちな人々に光を当てる温かい視点が、彼のジャーナリズムの大きな特徴と言えるでしょう。受賞歴は多岐にわたり、菊池寛賞、毎日出版文化賞のほか、放送文化基金賞、民放連盟賞、地方の時代映像祭大賞、早稲田ジャーナリズム大賞、放送人の会グランプリなど、数多くのジャーナリズム賞や映像賞を受賞しています。

主な著書としては、『ゴミが降る島 香川・豊島産廃との「20年戦争」』、『限界集落 吾の村なれば』、『生涯被告「おっちゃん」の裁判 600円が奪った19年』などがあります。これらの著書や数々のドキュメンタリー作品を通して、曽根氏は社会の抱える問題を深く掘り下げ、視聴者や読者に問いかけ続けています。

彼のジャーナリズムは、単なる事実の伝達にとどまらず、問題の背景にある構造や人々の思いを丁寧に描き出すことで、社会を動かす力を持つことを示しています。長年にわたる精力的な活動は、日本のジャーナリズム史において重要な足跡を残しています。

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