最後にして最初の人類

『最後にして最初の人類』解説

オラフ・ステープルドンによるSF小説『最後にして最初の人類』（1930年）は、人類の未来を20億年という途方もないスケールで描いた作品です。物語は、遠い未来の住人からの交信を受け取った“わたし”が、その内容を書き記すという形式で展開されます。

あらすじ

物語は21世紀初頭から始まり、人類が18種類もの異なる種へと進化・変容を繰り返しながら、宇宙へと進出していく過程を描きます。気候変動、戦争、疫病、遺伝子操作など、さまざまな要因によって人類は変貌を遂げ、そのたびに新たな文明を築き、滅亡していきます。そして、人類は最終的に海王星へとたどり着き、そこで静かに終焉を迎えるのです。

作品の評価と影響

本作は、その壮大なスケールと哲学的なテーマで、SF界に大きな衝撃を与えました。ブライアン・オールディスは、本作が自身の創作活動に多大な影響を与えたことを語り、アーサー・C・クラークは「私の人生にこれほど大きな影響を与えた本は他にない」と絶賛しています。H.P.ラヴクラフトも本作を高く評価し、知人に「絶対に読むべき」と勧めています。

パトリック・ムーアもまた「オラフ・ステープルドンのSF小説『最後にして最初の人類』は非常に考えさせられる内容で、何度も読み返している」と述べています。

大衆文化への影響

本作は、SF作品だけでなく、コンピューターゲーム『Deus Ex』にも登場するなど、大衆文化にも影響を与えています。

映画化

2020年には、アイスランドの作曲家ヨハン・ヨハンソンの手によって映画化されました。ティルダ・スウィントンの朗読、BBCフィルハーモニー管弦楽団の演奏、そして旧ユーゴスラビアの記念碑（スポメニック）の映像が組み合わされた、実験的な作品となっています。映画では、原作の終盤を中心に、物語が1時間程度にまとめられています。

日本語訳

日本語訳としては、浜口稔訳によるものが、国書刊行会（2004年）と筑摩書房〈ちくま文庫〉（2024年）から刊行されています。ちくま文庫版は改訳版です。

読書案内

『最後にして最初の人類』は、単なるSF小説としてだけでなく、人類の存在意義や未来について深く考えさせられる作品です。壮大なスケールで繰り広げられる物語を通じて、読者は自らの存在を見つめ直すきっかけを得るでしょう。SFファンはもちろん、哲学や歴史に興味のある方にもおすすめの一冊です。

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