月寒送信所

月寒送信所と北部軍防空作戦室：札幌の戦跡

月寒送信所は、かつて札幌市豊平区月寒東2条1丁目に位置していた陸上自衛隊の通信施設です。この記事では、その前身である北部軍防空作戦室についても詳しく解説します。

北部軍防空作戦室：戦時下の司令部

1940年（昭和15年）12月2日に創設された大日本帝国陸軍北部軍司令部。当初の建物は木造2階建てでしたが、アメリカ軍の空襲に備え、強固な作戦室の建設が急務となりました。

1942年（昭和17年）、司令部広場の北西にコンクリート製の作戦室の建設が開始されました。通常3年を要する工事を、過酷な労働環境下でわずか1年後の1943年（昭和18年）に完成させました。

作戦室は地上2階・地下3階の構造で、壁の厚さは1メートルを超え、1トン爆弾の攻撃にも耐えうる堅牢さを誇りました。耐弾構造も二重化され、最深部からは司令部への地下道が延びていたと伝えられています。

当時、地上1階から地下1階までが吹き抜けとなっており、正面の壁には青森県・北海道に加え、南樺太や千島列島を含む広大な地図が掲げられていました。この地図は、防空作戦の重要な情報源でした。

通信業務は、女学校卒業後に集められた約280名の女子挺身隊が担当。3交替制で24時間体制を維持し、受信した情報を地図上の該当箇所にランプを点灯させることで、参謀らが作戦を立案する上で重要な役割を果たしました。

月寒送信所：戦後の変遷と終焉

戦後、この施設は北部方面隊札幌駐屯地の飛び地として扱われ、「陸上自衛隊札幌駐屯地月寒送信所」という名称が与えられました。当初は陸上自衛隊の通信所として、後に通信士の教育施設として利用されましたが、末期には施設警備のための人員が派遣されるのみとなりました。

札幌市に現存する貴重な戦争遺跡として、保存を求める声が高まりました。しかし、2007年（平成19年）11月26日に一般公開された後、2008年（平成20年）1月から2月にかけて取り壊されました。

現在、跡地には国家公務員宿舎が建設されています。送信所の閉鎖後、通信機能は真駒内駐屯地に移転しています。

参考文献

札幌郷土を掘る会『写真で見る札幌の戦跡』北海道新聞社、2010年12月28日。ISBN 978-4-89453-578-7。

外部リンク

札幌・北部軍司令部を観光
旧北部軍司令部防空指揮所の一般公開
平成14年度末までに用途廃止･売却可能と見込まれる財産一覧表 - ウェイバックマシン

もう一度検索