有声両唇摩擦音

有声両唇摩擦音（ゆうせいりょうしんまさつおん）

有声両唇摩擦音は、音声学における子音の分類の一つで、発音時に上下の唇を使って摩擦音を生じさせる音です。国際音声字母（IPA）では [β] という記号で表されます。この記号は、ギリシャ文字のベータ（β）の小文字に由来しています。

発音の特徴

有声両唇摩擦音は、以下の特徴を持ちます。

気流の起こし手: 肺から空気を押し出す肺臓気流機構を利用します。
発声: 声帯を振動させて発音する有声音です。
調音:
調音位置: 上唇と下唇の両唇を使って発音します。このため、「両唇音」に分類されます。
調音方法:
口腔内の気流: 口腔内で呼気を狭め、その狭い隙間を空気が通過する際に摩擦を生じさせます。
調音器官の接近度: 上唇と下唇を近づけて狭い隙間を作り、その隙間を空気が通る際に摩擦を起こします。
口蓋帆の位置: 口蓋帆（軟口蓋）を上げて鼻腔への通路を塞ぐことで、口から空気を出す口音です。

具体的な言語例

有声両唇摩擦音は、様々な言語に現れます。以下にいくつかの例を示します。

日本語:
日本語では、任意の母音の後ろに現れるバ行の子音（例えば、「あば」の「ば」）が、この音で発音されることがあります。ただし、日本語のバ行の子音は、一般的には破裂音 [b]で発音されることが多く、摩擦音[β]として発音されるかどうかは、地域差や個人差、また発音の速さや強調度合いなどによっても異なります。より正確に表現するならば、バ行の子音は[b]から[β]への揺れがあると言えるでしょう。
スペイン語:
スペイン語では、語頭と [m] の後を除く「b」と「v」の文字で表される音が、有声両唇摩擦音 [β] で発音されます。例えば、"cabaña"（小屋）や "lavar"（洗う）などの単語で聞くことができます。
ポルトガル語:
ポルトガル語では、口母音にはさまれた「b」の文字で表される音が、有声両唇摩擦音 [β] で発音されます。例えば、"abacaxi"（パイナップル）などの単語で聞くことができます。
フィジー語:
フィジー語では、"v" の文字で表される音が [β] で発音されます。
中期朝鮮語:
中期朝鮮語では、ハングル字母の「ㅸ」が、有声両唇摩擦音 [β] を表していました。現代朝鮮語では消失しています。

関連する用語

無声両唇摩擦音: 有声両唇摩擦音の対となる音で、声帯の振動を伴わない摩擦音です。
子音: 母音と対比される音で、発音時に口の中や喉で何らかの妨げを受ける音です。
* 国際音声記号（IPA）: 世界の様々な言語の音を正確に表記するための記号体系です。


有声両唇摩擦音は、音響学や音声学において重要な概念です。その特徴を理解することで、様々な言語の音の構造をより深く知ることができます。

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