有声歯摩擦音

有声歯摩擦音について

有声歯摩擦音（ゆうせい は まさつおん）は、子音の一種であり、発音時に舌先を上の歯に近づけ、その隙間から息を摩擦させて出す音です。国際音声記号では[ð]と表記され、この記号はアイスランド語などで用いられる文字「エズ (Ð, ð)」に由来します。この音は、英語の「this」や「that」といった単語の「th」の部分に現れる音として知られています。

有声歯摩擦音の特徴

気流の発生

有声歯摩擦音は、肺から送り出される呼気によって生成されます。この気流が、後述する調音器官の隙間を通過する際に摩擦を生じ、特有の音を作り出します。

発声

発音時には声帯が振動するため、有声音に分類されます。声帯の振動を伴わない無声歯摩擦音（[θ]）とは、この点で区別されます。

調音

• - 調音位置: 舌の先端を上の歯の裏側、または歯の縁に近づけて発音します。このため、歯音に分類されます。
• - 調音方法: 口腔内の気流は舌の中央を通ります。このため、中線音と分類されます。
• - 調音器官の接近度: 舌と歯の間にごくわずかな隙間を作り、その隙間を息が通過する際に摩擦を生じさせます。この摩擦が有声歯摩擦音特有の音色を作り出します。
• - 口蓋帆の位置: 口蓋帆は持ち上げられ、鼻腔への通路が閉じられます。これにより、口から息が排出される口音となります。

言語における有声歯摩擦音

有声歯摩擦音[ð]は、無声歯摩擦音[θ]とともに、音素として持つ言語は比較的少数です。さらに、この音を有声歯茎摩擦音[z]や有声歯茎破裂音[d]といった他の類似音素と区別して使用する言語は、さらに限られます。

以下に、有声歯摩擦音[ð]を使用する言語の例を挙げます。

• - 現代ギリシア語: δ (デルタ) がこの音を表します。
• - アルバニア語: dh という綴りで表されます。
• - スペイン語: 単語の語頭や [l], [n] の後を除いた d が、この音で発音される場合があります。
• - ウェールズ語: dd という綴りで表されます。
• - 英語: 有声のth がこの音を表します。例：this, that, the など。
• - デンマーク語: 強勢母音の後の d や、名詞・動詞の語尾変化による -et の t がこの音に変化することがあります。
• - アイスランド語: ð がこの音を表しますが、語中の位置によっては無声で発音されることもあります。
• - アラビア語: ذ という文字で表されます。

関連事項

• - 無声歯摩擦音: 有声歯摩擦音と対をなす子音で、[θ]と表記されます。英語の「think」の「th」の音などがあります。
• - 子音: 音声学における音の種類の一つ。発音時に気流が何らかの妨げを受ける音です。
• - 国際音声記号: 世界のあらゆる言語の音を表記するための記号体系で、[ð]はその一つです。

有声歯摩擦音は、一見すると発音が難しいと感じるかもしれませんが、舌と歯の位置を意識し、息を摩擦させることで、比較的簡単に習得できる音です。この音を正確に発音することで、様々な言語の理解が深まるでしょう。

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