有東木の盆踊

有東木の盆踊

静岡県静岡市葵区有東木地区に伝わる「有東木の盆踊」は、国の重要無形民俗文化財に指定されている貴重な民俗芸能です。その特徴は、古い形式を色濃く残した多様な風流系の踊りを伝承している点にあります。

開催時期と場所

踊りは毎年8月14日と15日の両日、地区内にある東雲寺の境内を会場にして行われます。

踊りの構成

両日とも、踊りはまず男性のみによる「男踊り」から始まります。続いて女性のみの「女踊り」となり、その後は男女が交互に様々な演目を踊り進めます。そして、最後は男性による勇壮な「長刀踊り」で締めくくられます。

基本的には、木と紙で作られた城郭型の灯籠を頭上に掲げた男性を中心として、輪になって踊ります。ただし、「長刀踊り」だけは例外で、踊り手たちが互いに向かい合い、列を作って踊る形式をとります。

踊り手は、木製の長刀や扇など、さまざまな採り物（小道具）を手に持ちます。また、古い楽器であるコキリコやササラを打ち合わせたり、擦り合わせたりしながら、独特の音色を奏でます。15日には、灯籠を先頭にして、踊り手たちが集落の辻まで行列します。そして、ササラやコキリコに取り付けられた紙房を燃やし、精霊を送り出すという古風な儀式も行われます。

起源と歴史

有東木の盆踊の起源は、残念ながら明確には分かっていません。しかし、同種の踊りを伝えている平野地区の盆踊り太鼓に記された修理記録から、少なくとも享保7年（1722年）には、現在のような形式の盆踊りが行われていたと考えられています。

有東木と平野に伝わる、男女が別々に踊る形式の盆踊りは、その起源を江戸時代の初期にまで遡ることができるとされています。かつては合計100種を超える歌詞が伝承されていたそうですが、現在では男踊りが10種、女踊りが13種伝わっています。

参考文献

星野 紘、宮田 繁幸、久保田 裕道 ほか 編『民俗芸能探訪ガイドブック』国書刊行会、2013年9月
高橋秀雄、八木洋行 編『祭礼行事・静岡県』桜楓社、1992年11月
中村羊一郎 『風流と有東木盆踊』静岡新聞社、2024年1月31日 ISBN 978-4-7838-8079-0

外部リンク

有東木の盆踊 - 国指定文化財等データベース（文化庁）

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