風流

風流（ふりゅう）とは

風流とは、中世以降の日本で高揚した独特の美意識です。人目を惹きつけるために、華やかで斬新な趣向を凝らした意匠を指し、婆娑羅や数寄といった美意識と並び、侘び・寂びとは対照的な存在として認識されていました。この美意識は、芸能、美術、建築など、様々な分野に影響を与えました。

室町時代の漢和辞典『下学集』には、「風流の義也。日本の俗、拍子物を呼びて風流と曰ふ」とあり、当時の風流が音楽や芸能と深く結びついていたことが伺えます。

風流の起源と発展

風流の起源は古く、平安時代中期に遡ります。『洛陽田楽記』には、田楽が「初め閭理よりして、公卿に及ぶ」と記されており、庶民から貴族へと広まっていった文化運動であったことが分かります。風流は、平安時代から江戸時代まで、庶民による文化運動として長く続きました。

風流に属する分野は多岐にわたります。本田安次は『日本の伝統芸』において、風流を以下のように分類しています。

神楽: 巫女神楽、採物神楽、湯立神楽、獅子神楽など
田楽: 田遊び、御田植神事など
風流: やすらい花、お練り、念仏踊りなど
語り物・祝福芸: 三河万歳など
* 渡来芸・舞台芸: 延年、歌舞伎など

現代の私たちが日常的に使う「風流（ふうりゅう）」という言葉が持つ美意識とは、やや異なる意味合いを持っていたことがわかります。

風流の歴史

『万葉集』では、「みやび」と訓じられ、「好き心」といった意味合いも持っていました。平安時代には、歌合などの行事で用いられる故事や文芸作品に由来する作り物や衣装を指す言葉として使われるようになります。平安時代末期以降は、祭礼の山車や衣装、宴席の州浜台などに施された華美な趣向を「風流」と呼ぶようになりました。また、このような趣向を好む人々は「風流者（ふりゅうざ）」と呼ばれました。

永長元年（1096年）には、貴族から庶民までが風流な格好で田楽を演じながら行進する「永長の大田楽」が行われました。久寿元年（1154年）の今宮社御霊会では、傘の上に風流な飾りの花を掲げて唄い囃す「風流のあそび」が行われました（『梁塵秘抄口伝集』巻14）。これらの記録は、後世における音曲や歌で囃す「風流」の原型を示すものとして重要です。

南北朝時代以降には、都市の町衆や農村の有力者層が、祭礼や芸能に「風流」を取り入れました。派手な衣装を身にまとい、笛や太鼓の音に合わせて練り歩く「囃子物」や、それに合わせて拍子を取る「拍子物」、集団で踊りを演じる「風流踊」などが登場しました。特に風流踊は、室町時代後期から江戸時代初期にかけて大流行し、風流といえば風流踊を指すほどになりました。

政治権力は、過度な風流を禁じる命令を度々出しましたが、効果はありませんでした。戦国時代末期から江戸時代初期には、権力者側にも風流を好意的に捉える風潮が見られました。慶長9年（1604年）には、豊臣秀吉の7回忌に合わせて京都の町衆が大規模な風流踊を開催し、豊臣氏からの支援を受けました。

風流の影響

風流の趣向は、同時代の寺院芸能である猿楽、能、狂言などにも影響を与えました。能・狂言とともに能楽を構成する要素の一つである式三番においては、派手な格好で歌唱混じりに演じる芸を「風流」と呼び、演出の重要な要素として用いられました。狂言の演出にも風流が取り入れられています。万治3年（1660年）には、大蔵虎明が『風流之本』を著し、風流30番を採録しましたが、今日では行われなくなったものも多く存在します。

風流の格好、芸能、感覚は、江戸時代に確立した歌舞伎や人形浄瑠璃などにも影響を与えました。また、桃山文化や元禄文化の建築にも、その影響が見られます。現代の盆踊りや踊念仏、正月飾りとの関連性も指摘されています。

風流は、日本の文化、芸能、美意識に深く根ざした概念であり、その歴史と変遷を辿ることは、日本文化の多様性と奥深さを理解する上で重要な意味を持ちます。

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