有栖川宮詐欺事件

有栖川宮詐欺事件とは

2003年4月、東京で偽の結婚披露宴が開かれ、多くの人々が金銭を騙し取られた事件です。この事件は、有栖川宮の祭祀継承者を自称する男と、その妃と偽る女が、あたかも皇族であるかのように振る舞い、招待客から祝儀などを詐取しました。

事件の概要

2003年4月6日、東京・青山で盛大な結婚披露宴が開催されました。しかし、これは全てが偽りでした。男は「有栖川識仁」と名乗り、高松宮宣仁親王の落胤であると主張。女は「妃殿下」と称し、招待客から祝儀や写真撮影権などを騙し取りました。同年10月、この男女とその関係者は警視庁公安部に逮捕されました。裁判の結果、二人の間に恋愛関係や婚姻関係は一切なかったことが明らかになりました。

有栖川宮家について

有栖川宮家は、江戸時代に創設された宮家でしたが、1913年に当主が後継者なく亡くなったため、旧皇室典範により断絶しました。その後、有栖川宮家の祭祀は高松宮家が継承しました。事件当時も、高松宮家が祭祀を執り行っており、「有栖川宮の祭祀継承者」を名乗ることはあり得ないことでした。しかし、多くの人々、著名人を含む約400人がこの詐欺に引っかかってしまいました。中には、石田純一のように事情聴取を受けた者や、ダイヤモンド☆ユカイのように、祝儀から出演料を支払われたのではないかと疑念を持った者もいました。

偽の皇族を名乗る男の正体

事件の首謀者である男は、以前から「有栖川宮記念事業団」という政治団体の代表を名乗り、様々な活動を行っていました。彼は、「高松宮から落胤であることを告げられた」と主張していましたが、皇室典範では非嫡出子は皇位継承権を持たないため、その主張は法的に認められません。しかし、一部の右翼団体はこれを信じ、警察も看過できない事態となりました。逮捕前には、右翼団体・日本青年社が彼を名誉総裁に推戴していましたが、逮捕直前に任期満了を理由に退任させています。

裁判と判決

2006年7月、東京地裁で裁判が行われました。検察側は、被告らの皇族への畏敬を利用した大胆な犯行を厳しく非難し、懲役3年を求刑しました。同年9月、裁判所は2人に懲役2年2ヶ月の実刑判決を下しました。判決では、詐欺の被害者とされた出席者の一部は、初めから偽の皇族であることを知っていたと認定され、詐欺罪の成立は一部にとどまりました。被告らは控訴せず、一審判決が確定しました。

事件後の状況

自称「殿下」の男は出所後、再び「有栖川宮」として活動を再開し、政治団体の再興を目指していると報じられました。また、政治団体「有栖川宮記念」を設立し、活動を継続していることが確認されています。

手紙の紛失と週刊新潮による掲載

事件後、男女は東京拘置所に収監されましたが、男から女に送られた手紙が拘置所によって紛失し、さらにその手紙が週刊新潮に掲載されるという事態が発生しました。これにより、2人は精神的苦痛を受けたと訴訟を起こし、国や新潮社との間で和解が成立しました。国は解決金を支払い、新潮社は慰謝料を支払うことになりました。

事件を題材とした作品

この事件は、小説や映画などの創作の題材にもなっています。

久世光彦『有栖川の朝』
橋口亮輔監督 『恋人たち』

関連事項

* 皇室詐欺

まとめ

有栖川宮詐欺事件は、皇族を騙り人々を欺いた悪質な詐欺事件であり、社会に大きな衝撃を与えました。この事件を通じて、皇室や詐欺行為に関する様々な問題点が浮き彫りになりました。

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