有泉貞夫

有泉 貞夫について

有泉貞夫（ありいずみ さだお、1932年12月21日 - 2022年8月15日）は、日本における近代政治史の権威として広く知られた歴史学者であり、東京商船大学の名誉教授として教育や研究に尽力しました。彼の豊かな学問の業績は、特に日本の近代政治史に深い影響を与えています。

生い立ちと教育

彼は1945年、山梨県西八代郡市川大門町に生まれました。生家は江戸後期から続く酒造業を営む家系で、父は市川大門町の町長を務めた直松氏、祖父は初代村長であり漢詩人の有泉米松でした。教育の初期には市川小学校や市川国民学校を経て、戦中、山梨県立甲府中学校に進学しました。しかし、戦局が悪化する中で彼は政府の動員によって、陸軍飛行場の建設に関わることになります。

その後、1951年に山梨県立甲府第一高等学校を卒業し、1952年に京都大学文学部に入学。特に歴史についての興味から、1954年には史学科国史専攻に進み、1956年に卒業。大学院に進学した彼は、1961年に国史学の博士課程を単位取得退学で終了しました。

国立国会図書館と学問的活動

1961年、彼は国立国会図書館に入職し、政治関係の資料に関するレファレンス業務を担当しました。この期間には、職員組合サークル『六月会』に参加し、E・H・カーについて研究を深めました。また、日露戦争や民族学の巨匠・柳田國男についても興味を持ち、自らの研究に活かしました。この時期に早くも陸奥宗光や国家祝祭日に関する研究成果を発表し、彼の研究スタイルが徐々に形成されていきました。

東京商船大学でのキャリア

その後、東京商船大学に転職し、助教授、教授と昇進し、1996年に定年を迎えました。定年後も研究を続けながら、山梨学院大学にて教授職も務め、1996年からは山梨県史編さん専門委員会の近現代部会長として活躍しました。彼はまた、1983年には著書『星亨』でサントリー学芸賞を受賞し、その業績が広く評価されました。さらに、1985年には「明治政治史の基礎過程-地方政治状況史論」で文学博士の称号を取得しました。

著作と貢献

有泉の著作には多くの研究書があり、特に彼の単著による『やまなし明治の墓標』や『星亨』は高評価を得ています。彼はさらに、『山梨県の百年』や『山梨近代史論集』といった編著も手がけ、地域の歴史的な記録の整備にも尽力しました。これらの作品は日本近代政治史だけでなく、地域史をも重要視した有泉の学問的アプローチを反映しています。

最後の時期

有泉貞夫は2022年8月15日、誤嚥性肺炎により89歳で亡くなりました。彼の死は日本の歴史学界にとって大きな損失であり、多くの教え子や同僚に惜しまれています。近代日本政治の研究における彼の貢献は、今後も新たな世代に受け継がれていくことでしょう。

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