有田のイチョウ

有田のイチョウ

佐賀県西松浦郡有田町泉山にそびえ立つ「有田のイチョウ」は、泉山弁財天神社/市杵島神社の境内に生育する、国の天然記念物に指定された巨木です。地元では「有田の大公孫樹」または「有田の大イチョウ」とも呼ばれ親しまれています。1926年に天然記念物に指定された、日本で最も古いイチョウの天然記念物の一つです。

歴史と背景

有田のイチョウが立つ泉山地区は、有田焼のルーツとなる白磁鉱が発見された場所です。この地は、日本における磁器発祥の地とも言われ、陶工たちが集まり発展しました。現在も、古い商家や窯業関連の作業場、そして「トンバイ塀」と呼ばれる独特な土塀が残る歴史的な街並みが広がっています。この地区は「有田内山」として国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。

また、泉山地区は日本で最初に磁石が発見された場所としても知られています。かつて、このイチョウの樹下には、磁石や陶磁器の不正な持ち出しを取り締まる「口屋番所」が設けられていました。このイチョウは、町の歴史を見守ってきた象徴的な存在と言えるでしょう。

巨木の姿

推定樹齢850年から1000年を超えるとも言われる有田のイチョウは、高く直立した樹形が特徴です。通常、老木に見られる乳柱と呼ばれる突起がほとんどないのも特徴の一つです。樹高は約40メートル、根回りは約11メートル、目通り幹囲は約8メートルにもなります。枝は東西に約31メートルも広がり、その巨大な姿は圧倒的な存在感を放っています。樹皮にはノキシノブやマメヅタなどの植物が着生しており、長い年月を感じさせます。

イチョウは雌雄異株ですが、この木については文献によって性別が異なり、「雌木」とするものと「雄木」とするものがあります。この違いもまた、この木が持つ歴史の深さを示しているのかもしれません。

地域との関わり

イチョウは害虫や火災に強い木として知られていますが、有田のイチョウは過去に大きな火災から地域を守ったという伝承があります。しかし近年では、強風による枝の落下が問題となっており、周辺の家屋に被害を与えることもありました。そのため、枝の切除やケーブルによる補強などの対策が施されています。また、隣接する民家は、枝の落下による被害を避けるため、曳家によって移動されました。この出来事は、自然と人間が共存することの難しさを物語っています。

アクセス

• - 所在地: 佐賀県西松浦郡有田町泉山1-13
• - 交通:

- JR九州佐世保線上有田駅下車、徒歩約10分
- 西九州自動車道波佐見有田インターチェンジより車で約10分


有田のイチョウは、その歴史的背景と巨木としての存在感から、多くの人々を魅了し続けています。訪れる際には、その歴史と自然の力を感じてみてください。

参考資料

加藤陸奥雄他監修・貞松光男、『日本の天然記念物』、講談社
文化庁文化財保護部監修、『天然記念物事典』、第一法規出版
本田正次、『植物文化財 天然記念物・植物』、東京大学理学部植物学教室内 本田正次教授還暦記念会
渡辺典博、『巨樹・巨木 日本全国674本』、山と渓谷社

関連情報

有田のイチョウ - 国指定文化財等データベース（文化庁）
大公孫樹（口屋番所跡） ありたさんぽ 有田町観光協会ウェブサイト
有田の大公孫樹 有田町歴史民俗資料館ホームページ
大公孫樹（おおいちょう）（有田町）佐賀県の観光情報ポータルサイト あそぼーさが 一般社団法人 佐賀県観光連盟 公式サイト

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