服部勉

服部勉氏（はっとり つとむ、1932年7月8日 - ）は、日本の農学および微生物学分野における重鎮であり、東北大学の名誉教授を務めました。

略歴とキャリア

岐阜県大垣市に生まれた服部氏は、名古屋大学理学部を卒業後、東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻へ進学。1960年に博士課程を修了し、「界面に吸着せる細菌の研究」という論文で農学博士号を取得しました。この博士論文を契機に、氏は土壌に生息する微生物の研究に本格的に取り組み始めます。

東北大学では、まず農学研究所の助教授として研究と教育に携わりました。その後、遺伝生態研究センターの教授に昇任し、長年にわたり同分野の研究を主導します。1996年に定年退官を迎え、東北大学名誉教授の称号を授与されました。大学を退いた後も、東京農業大学で教授を務めるなど、後進の指導と研究活動を継続しました。

研究テーマ

服部氏の生涯にわたる主要な研究テーマは、土壌微生物の生態でした。氏は、水田、畑、草地、山林など、私たちの身の回りに存在する多様な環境における土壌微生物群集の複雑な構成、機能、そして相互作用の解明に情熱を注ぎました。

土壌は、無数の微生物が織りなす複雑な生態系であり、植物の成長や物質循環において極めて重要な役割を担っています。服部氏の研究は、この見えない世界の生命活動を科学的に理解することを目的とし、日本の土壌微生物学の基礎を築く上で多大な貢献をしました。

学会活動と家族

学術界においても活発に活動し、日本微生物生態学会の会長を務めるなど、関連分野の発展と普及に尽力しました。私生活においては、実業家・民俗学者の渋沢敬三氏の次女である服部黎子氏と結婚しています。また、渋沢家当主である渋沢雅英氏は義兄にあたります。

主な著作

服部氏は、その豊富な研究成果や専門知識を広く伝えるため、数多くの著書を執筆しました。専門家だけでなく、一般読者にも分かりやすい啓蒙書も多く手掛けており、微生物学や土壌生態学への関心を高める上で重要な役割を果たしました。代表的な著作には以下のようなものがあります。

『大地の微生物』（岩波新書、1972年、および『大地の微生物世界』として1987年に新版）
『微生物生態入門』（東京大学出版会、1978年）
『微生物学の基礎』（学会出版センター、1986年）
『微生物を探る』（新潮選書、1998年）

また、宮下清貴氏らとの共編著『土の微生物学』（養賢堂）や、日本土壌微生物学会と共編・著の『「過去」と対話してみませんか?』、『「通信」の時代と現在の間』（博友社）などがあります。さらに、生化学者セント・ジェルジの著作『生体とエネルギー』の翻訳（みすず書房、1958年）も手掛けています。

服部勉氏の長年にわたる土壌微生物研究とその教育・普及活動は、日本の農学および微生物学の進展に不可欠な貢献であり、その功績は今も高く評価されています。

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