朝光寺原古墳群

朝光寺原古墳群について

朝光寺原古墳群（ちょうこうじばらこふんぐん）は、神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町に存在していた、かつての古墳群です。この古墳群は市が尾駅の東側に位置しており、かつては朝光寺原遺跡の一部として知られていましたが、現在はそのすべてが消失しています。

古墳群の背景

朝光寺原古墳群がある朝光寺原遺跡は、谷本川の北側に広がり、市が尾駅の東口から見て、田園都市線と東名高速道路によって東西に約150メートル、南北に約300メートルの範囲を占めていました。1960年代には、日本の高度経済成長期によって横浜市内の市街地が急速に拡大し、発展の波がこの地域にも押し寄せました。

1965年には「横浜市六大事業」の一つとして港北ニュータウン計画が発表され、続いて1966年には田園都市線が開通しました。この開発により、当時の港北区や緑区域（現在の青葉区や都筑区を含む）に広がっていた自然環境は削り取られ、宅地化が進みました。特に市ケ尾町は港北ニュータウンの開発の影響を受け、かつての畑地や雑木林は新しい住宅地に変わっていきました。

発掘調査

開発から遺跡を守るため、考古学者たちが集まり、横浜市北部埋蔵文化財調査委員会が設立されました。その成果として、1967年8月1日から12月10日までの間に朝光寺原遺跡の第1次発掘調査が実施され、古墳群の発見がありました。この古墳群は3基の円墳から構成されており、埋葬された人物と一緒に様々な遺物が出土しました。

1号墳からは武具としての甲冑や武器、馬具、さらには様々な玉類が発見されました。特に、1号墳から出土した甲冑セット（眉庇付き冑と三角板鋲留短甲）は、神奈川県内ではその唯一の発見例であり、極めて貴重な歴史的資産です。これにより、この古墳群は築造時期も解明され、1号墳が5世紀後半、2号墳が6世紀前後、3号墳が6世紀前半に作られたことが明らかとなりました。

現在の状況

残念ながら、発掘調査が終了した後、朝光寺原遺跡は速やかに破壊され、現在ではそのかけらすら見ることができません。周辺には市ケ尾町公園が存在し、ここには朝光寺原遺跡に関する案内パネルが設置されていますが、公園自体は遺跡の区域には含まれていません。

1号墳から出た甲冑やその他の出土遺物は、横浜市指定の文化財として、横浜市歴史博物館に保管されており、一般に公開されています。これにより、歴史的な価値を持つこれらの品々は、忘れられた遺跡の記憶を後世に伝える役割を果たしています。

もう一度検索