朝鮮燕行使

朝鮮燕行使の役割と影響

朝鮮燕行使（ちょうせんえんこうし）は、李氏朝鮮が明および清の冊封体制において派遣した朝貢使節のことを指します。特に清に対する使節を指す場合もありますが、広義には朝鮮からの使節全般を含む重要な外交活動として位置付けられています。これらの使節は、明の皇帝や清の皇帝に対し定期的に送られ、朝鮮の外交関係を維持する上で中心的な役割を果たしていました。

概要

特に趙憲という使者が明の皇帝万暦帝に謁見した際、彼は感激のあまり涙を流し、三跪九叩頭の礼を尽くしました。これは、明帝国の一員としての意義を感じたからです。19世紀半ばに西洋列強の影響が強まるまで、朝鮮にとって中国との関係は圧倒的に重要でした。使節団は毎年定期的に派遣され、289年間でおよそ500回以上もの訪問が行われたことが記録されています。この外交関係は、西洋の影響が顕著になる前の長い歴史を持ち、国際的な地位を支える重要な基盤となっていました。

名称の由来と使節の種類

「朝鮮燕行使」という用語は、当時の朝貢使節の記録「燕行録」から派生した日本の学術用語です。李氏朝鮮では、使節団はその目的によって「歳幣使」や「謝恩使」、「進賀使」などに分類され、一般的には「事大使」や「赴京使」という総称で呼ばれていました。

一方で、高麗や北朝鮮からの使節も「燕行使」と称されることがありますが、これもまた現代の学術的表現です。実際にこれらの国々が当時、燕行使と呼ばれていたという証拠はありません。

明と清への使節活動

李氏朝鮮は、明に対しては定期的に使節を派遣し、明の滅亡までの252年間で約700回以上の使節団を送りました。清に対しては、1637年の丙子の乱以降、約250年間で500回以上の使節団が派遣されました。特に清との外交のために、1637年から1895年の間にかけて行われた使節は、当初は年に4回送られており、その後年に1回に減少しました。このペースは、他の冊封国、例えば琉球やベトナムと比較しても突出しています。

一般的に、1回の使節団の規模は約300人で、明・清へ派遣された総人数は約20万人に上ります。使節団は、交易や文化交流、情報収集を行い、この知識を朝鮮国内に持ち帰りました。このような交流により、朝鮮の政治、経済、文化に多大な影響が及びました。

ただし、戦後の韓国では、朝鮮通信使に関する研究が圧倒的に多い一方で、朝鮮燕行使に関する研究はほとんど行われていません。この背景には、慕華思想が影響しており、朝鮮燕行使が事大主義を象徴するものとして低評価される傾向があるためです。

定期的および臨時的な使節

使節団は、定期的な役割を果たす「歳幣使」や「三節使」などといった種類がありました。一方、臨時的な経路としては、「謝恩使」や「進賀使」、「告訃使」などが存在しており、それぞれが特定の目的を持って派遣されました。

このように、朝鮮燕行使は李氏朝鮮の国際外交の一端を担い、その活動は明や清との関係を築く上で極めて重要でした。これは、国家の発展や文化の交流、さらには政治的な安定にも深く関与していたことを示しています。

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