朧月夜 (歌曲)

朧月夜（おぼろづきよ）

『朧月夜』は、作詞を高野辰之、作曲を岡野貞一が手掛けた日本の唱歌で、叙情歌、童謡として広く親しまれています。2006年には「日本の歌百選」にも選ばれました。

楽曲解説

この楽曲は、1914年（大正3年）に『尋常小学唱歌 第六学年用』で発表されました。ニ長調で記譜され、1948年（昭和23年）以降は小学校6年生の音楽教科書に採用され、現在も歌い継がれています。

歌詞は、1番、2番ともに脚韻を踏み、各行が4+4+3+3音で構成されています。特に2番の「も」音の繰り返しが音楽的な特徴となっています。最初の2行で視覚的な情景を描写し、3行目で体性感覚や聴覚に触れ、最後の1行で全体を締めくくる構成となっています。これに、弱起で始まる3拍子のメロディーが組み合わされています。

作詞者の高野辰之は、長野県豊田村（現在の中野市）の出身で、飯山市で小学校教師をしていた時期があります。長野県の北信地方は、江戸時代から菜種栽培が盛んで、春には一面の菜の花畑が広がります。この風景が、『朧月夜』のモチーフになったと考えられています。ただし、菜の花畑の植物は、セイヨウアブラナや在来のアブラナではなく、野沢菜であるという説もあります。

高野辰之は「斑山」という号を用いており、晩年は長野県の野沢温泉で過ごしました。1990年には、野沢温泉村に記念館「おぼろ月夜の館 斑山文庫」が創設されています。

1989年には、「『日本のうた・ふるさとのうた』全国実行委員会」がNHKを通じて全国アンケートを実施し、その結果「あなたが選ぶ日本のうた・ふるさとのうた」で第4位を獲得しました。2006年には、文化庁と日本PTA全国協議会によって「日本の歌百選」に選定されています。

昭和の戦後から平成にかけては、鮫島有美子、ダークダックス、倍賞千恵子、芹洋子、由紀さおり・安田祥子姉妹、はいだしょうこなどの歌手が歌い、アルバムなどで発売されました。ポップス系のミュージシャンでは、矢野顕子が1986年にビデオ・アルバム『BROOCH』で、槇原敬之が1998年にカバー・アルバム『Listen To The Music』でこの曲をカバーしています。2004年には、マライア・キャリーがオリジナルの英語詞で歌う「MISTY MOON」と、中島美嘉の詞と葉加瀬太郎の曲を追加した「朧月夜〜祈り」が、清涼飲料水「爽健美茶」のCMソングとして使用されました。これらの楽曲の中には、令和の時代になってもオンラインで販売されているものも多くあります。

神奈川県二宮町では、吾妻山の早咲きの菜の花にちなんで、2016年1月9日からJR東海道線二宮駅の発車メロディーとして使用されています。編曲は塩塚博が担当しました。

関連語句

朧月夜
故郷
朧月夜〜祈り

参考文献
川崎洋 『大人のための教科書の歌』 いそっぷ社、1998年。ISBN 4900963054

外部リンク
* 朧月夜 - YouTube（歌：山野さと子）

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