木下恵司
愛知県出身の木下恵司は、日本のオートバイロードレース史に名を刻む元レーサーです。1956年11月22日に生まれた彼は、特に全日本ロードレース選手権の最高峰クラスである500ccクラスで二度のタイトル（1981年、1986年）を獲得したことで知られています。
高校時代、750ccのオートバイで山道を駆け巡るうちにライディングの楽しさに開眼。自身の技術をさらに磨きたいという思いから、国内レースの聖地である鈴鹿サーキットでの走行練習を開始しました。当初は約半年にわたり、実戦には参加せずひたすら練習走行を重ねたといいます。その練習量は誰にも引けを取らないという確固たる自信を築くまで走り込みました。その後、名古屋を拠点とするヤマハ系の強豪チーム「プレイメイトレーシング」に所属。先輩トップライダーである高井幾次郎氏から多くの刺激を受け、レーサーとして成長していきました。
19歳となった1976年、ノービス250ccクラスの第3戦鈴鹿でレースデビュー。この初レースでいきなりの優勝を飾り、鮮烈な印象を与えました。1977年にはジュニア250ccクラスでシーズン終盤に連勝するなど活躍。その実績が評価され、1978年からの国際A級昇格を果たしました。当時、レース活動を中心に据えながらも、建設会社での日々の仕事に励んでいた彼は、「苦しいことがあっても、これが体力をつけるために役立つと前向きに捉え、全てを勝利という目標に結びつけて頑張っている」と語っており、プロフェッショナルとしての意識の高さがうかがえます。
1979年には全日本ロードレース選手権350ccクラスで、石川岩男選手との激しいタイトル争いを制し、チャンピオンを獲得。1980年からはより排気量の大きいTZ500にマシンをスイッチしました。そして1981年にはヤマハの契約ライダーとなり、トップグループの仲間入りを果たします。同年、カテゴリー再編により新設された全日本500ccクラスにおいて、初代シリーズチャンピオンの栄冠に輝きました。1982年には角川映画『汚れた英雄』に協力し、主人公のライバル役を演じた勝野洋氏のライディングシーンの吹き替えを担当しています。
1983年、同じくヤマハワークスの平忠彦選手と500ccクラスのチャンピオンを巡る熾烈な争いを展開。最終戦までもつれ込みますが、鈴鹿で開催されたそのレースにスポット参戦した当時の世界チャンピオン、フレディー・スペンサーを果敢に追走した木下選手は序盤に転倒リタイア。このレースで2位に入りポイントを積み重ねた平選手にタイトルを奪われる結果となりました。シーズンオフ、その実力を高く評価され、ライバルメーカーであるホンダのワークスチーム（HRC）から移籍のオファーを受け、チームを移ります。
翌1984年、ホンダのエースライダーとしてNS500を駆り、再びヤマハのYZRを駆る平選手とチャンピオン争いを繰り広げます。最終的に僅か1ポイント差で惜しくもタイトルを逃し、ランキング2位となりました。ヤマハとホンダではマシンのコーナリング特性が大きく異なり、さらに使用するタイヤメーカーも（ヤマハはダンロップ、ホンダはミシュラン）違いました。そのような環境の変化に加え、フロントタイヤのインチ変更など試行錯誤を重ねながらも、この年練習走行を含めほとんど転倒がなかったことに対し、当時のHRC監督である福井威夫氏は「木下はよくやってくれた」と高く評価するコメントを残しています。ホンダの全日本における中心選手として、市販車NS400Rの新発売時には、WGPライダーのスペンサーや片山敬済氏と共にイメージキャラクターも務めました。
1985年シーズンは、前半を3気筒エンジンのNSで戦い、後半から4気筒エンジンのNSR500という2種類のマシンを使用しましたが、スズキの水谷勝選手にランキングで先行され、シーズン3位で終了しました。しかし、同年の鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、阿部孝夫選手とのペアでHRCからRVF750で参戦し、日本人チームとしては最上位となる4位で完走しています。
平選手が世界GPへと活動の場を移した1986年、500ccクラスはシーズンを通してNSR500で参戦した木下選手と水谷選手の一騎打ちになるかに思われました。しかし、これまで主に4ストローククラスで活躍していたモリワキの八代俊二選手が500ccクラスに転向し、木下選手と同じNSR500の供給を受け、獲得ポイントで木下選手に肉薄する展開となります。ホンダが八代選手を世界GPへ派遣する方針を固めたため、全日本での戦いは木下選手と水谷選手に絞られます。水谷選手は5月と6月の5レース全てで木下選手を上回り、2度の優勝などでポイント差を詰め、タイトル争いは緊迫しました。しかし8月31日開催のSUGOラウンドで木下選手が優勝、水谷選手がノーポイントに終わったことで形勢が逆転。有利な状況で迎えた最終戦日本GP（鈴鹿）では、WGP組のガードナー、平両選手に次ぐ3位に入り、確実にポイントを獲得。1981年以来、5年ぶり2度目となる最高峰500ccクラスの全日本チャンピオンに輝きました。同年7月の鈴鹿8耐では、USホンダのエースであるウェイン・レイニー選手との日米エースコンビでの参戦が発表されていましたが、レイニー選手の負傷によりマルコム・キャンベル選手とのペアとなり、この夢の組み合わせは実現しませんでした。
1987年シーズンを最後にHRCとの契約が終了し、1988年からはプライベーターとして市販レーサーのRS500Rで参戦を継続しました。阪神ライディングスクールの後援を受け、鈴鹿8時間耐久レースにも徳野政樹選手とのチームで参戦しています。そして1989年をもって、現役レーサーとしての活動に終止符を打ちました。
高校時代、750ccのオートバイで山道を駆け巡るうちにライディングの楽しさに開眼。自身の技術をさらに磨きたいという思いから、国内レースの聖地である鈴鹿サーキットでの走行練習を開始しました。当初は約半年にわたり、実戦には参加せずひたすら練習走行を重ねたといいます。その練習量は誰にも引けを取らないという確固たる自信を築くまで走り込みました。その後、名古屋を拠点とするヤマハ系の強豪チーム「プレイメイトレーシング」に所属。先輩トップライダーである高井幾次郎氏から多くの刺激を受け、レーサーとして成長していきました。
19歳となった1976年、ノービス250ccクラスの第3戦鈴鹿でレースデビュー。この初レースでいきなりの優勝を飾り、鮮烈な印象を与えました。1977年にはジュニア250ccクラスでシーズン終盤に連勝するなど活躍。その実績が評価され、1978年からの国際A級昇格を果たしました。当時、レース活動を中心に据えながらも、建設会社での日々の仕事に励んでいた彼は、「苦しいことがあっても、これが体力をつけるために役立つと前向きに捉え、全てを勝利という目標に結びつけて頑張っている」と語っており、プロフェッショナルとしての意識の高さがうかがえます。
1979年には全日本ロードレース選手権350ccクラスで、石川岩男選手との激しいタイトル争いを制し、チャンピオンを獲得。1980年からはより排気量の大きいTZ500にマシンをスイッチしました。そして1981年にはヤマハの契約ライダーとなり、トップグループの仲間入りを果たします。同年、カテゴリー再編により新設された全日本500ccクラスにおいて、初代シリーズチャンピオンの栄冠に輝きました。1982年には角川映画『汚れた英雄』に協力し、主人公のライバル役を演じた勝野洋氏のライディングシーンの吹き替えを担当しています。
1983年、同じくヤマハワークスの平忠彦選手と500ccクラスのチャンピオンを巡る熾烈な争いを展開。最終戦までもつれ込みますが、鈴鹿で開催されたそのレースにスポット参戦した当時の世界チャンピオン、フレディー・スペンサーを果敢に追走した木下選手は序盤に転倒リタイア。このレースで2位に入りポイントを積み重ねた平選手にタイトルを奪われる結果となりました。シーズンオフ、その実力を高く評価され、ライバルメーカーであるホンダのワークスチーム（HRC）から移籍のオファーを受け、チームを移ります。
翌1984年、ホンダのエースライダーとしてNS500を駆り、再びヤマハのYZRを駆る平選手とチャンピオン争いを繰り広げます。最終的に僅か1ポイント差で惜しくもタイトルを逃し、ランキング2位となりました。ヤマハとホンダではマシンのコーナリング特性が大きく異なり、さらに使用するタイヤメーカーも（ヤマハはダンロップ、ホンダはミシュラン）違いました。そのような環境の変化に加え、フロントタイヤのインチ変更など試行錯誤を重ねながらも、この年練習走行を含めほとんど転倒がなかったことに対し、当時のHRC監督である福井威夫氏は「木下はよくやってくれた」と高く評価するコメントを残しています。ホンダの全日本における中心選手として、市販車NS400Rの新発売時には、WGPライダーのスペンサーや片山敬済氏と共にイメージキャラクターも務めました。
1985年シーズンは、前半を3気筒エンジンのNSで戦い、後半から4気筒エンジンのNSR500という2種類のマシンを使用しましたが、スズキの水谷勝選手にランキングで先行され、シーズン3位で終了しました。しかし、同年の鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、阿部孝夫選手とのペアでHRCからRVF750で参戦し、日本人チームとしては最上位となる4位で完走しています。
平選手が世界GPへと活動の場を移した1986年、500ccクラスはシーズンを通してNSR500で参戦した木下選手と水谷選手の一騎打ちになるかに思われました。しかし、これまで主に4ストローククラスで活躍していたモリワキの八代俊二選手が500ccクラスに転向し、木下選手と同じNSR500の供給を受け、獲得ポイントで木下選手に肉薄する展開となります。ホンダが八代選手を世界GPへ派遣する方針を固めたため、全日本での戦いは木下選手と水谷選手に絞られます。水谷選手は5月と6月の5レース全てで木下選手を上回り、2度の優勝などでポイント差を詰め、タイトル争いは緊迫しました。しかし8月31日開催のSUGOラウンドで木下選手が優勝、水谷選手がノーポイントに終わったことで形勢が逆転。有利な状況で迎えた最終戦日本GP（鈴鹿）では、WGP組のガードナー、平両選手に次ぐ3位に入り、確実にポイントを獲得。1981年以来、5年ぶり2度目となる最高峰500ccクラスの全日本チャンピオンに輝きました。同年7月の鈴鹿8耐では、USホンダのエースであるウェイン・レイニー選手との日米エースコンビでの参戦が発表されていましたが、レイニー選手の負傷によりマルコム・キャンベル選手とのペアとなり、この夢の組み合わせは実現しませんでした。
1987年シーズンを最後にHRCとの契約が終了し、1988年からはプライベーターとして市販レーサーのRS500Rで参戦を継続しました。阪神ライディングスクールの後援を受け、鈴鹿8時間耐久レースにも徳野政樹選手とのチームで参戦しています。そして1989年をもって、現役レーサーとしての活動に終止符を打ちました。
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