木下成太郎

木下 成太郎（きのした しげたろう、慶応元年8月2日（1865年9月21日） - 昭和17年（1942年）11月13日）は、日本の激動期に実業家として礎を築き、政治家として国政に貢献した人物です。但馬国豊岡藩家老の家柄に生まれました。

若くして漢学を修めた後、大学予備門で学びました。明治維新後の自由民権運動に共鳴し、自由党に加わります。しかし、明治20年（1887年）の保安条例により東京から追放される憂き目に遭い、父が居た北海道室蘭へ新天地を求めました。

室蘭から厚岸町へ移り住んだ木下は、この地で農業や農牧業を営みます。特に、厚岸が豊かな昆布の産地であることに着目し、当時輸入に頼っていたヨードの国産化という困難な事業に挑みました。明治24年（1891年）、バラサン岬に製造所を設立し、見事に日本で初めてヨードの国内生産を成功させました。これは、化学工業の発展に大きく貢献する業績となりました。地域社会においても指導的な役割を果たし、厚岸町会議員や北海道会議員（二期）、さらには水産・漁業関連団体の要職を歴任しました。また、『厚岸新聞』や雑誌『蝦夷の燭』の創刊に関わるなど、言論活動にも熱心でした。

こうした地域での実績を背景に、大正元年（1912年）の第11回衆議院議員総選挙で初当選を果たします。その後、衆議院議員として合計七期にわたり当選を重ねました（第14回、第16回から第20回、第19回は繰り上げ）。立憲政友会に所属し、党務に深く関わり総務を務めました。特に、当時の有力政治家であった原敬を大木遠吉と共に支え、日本の重要な政策課題であった北海道の開拓・振興事業において、その推進に中心的な役割を果たしました。

政治活動や実業の傍ら、文化や教育分野の振興にも意欲を示しました。大東文化協会や、現在の武蔵野美術大学につながる帝国美術学校の創設にも積極的に参画しました。

思想的には保守的な側面も持ち合わせ、特に当時の論争となった「天皇機関説」に対しては強く反対し、美濃部達吉攻撃の先頭に立ちました。一方で、軍部の台頭に伴う戦争の拡大には反対の姿勢を示し、東條内閣の打倒を画策するなど、複雑な政治的側面を持っていました。

晩年は札幌や東京で過ごし、昭和17年（1942年）に77歳でその生涯を閉じました。現在、札幌市の中島公園には彼の功績を記念する銅像が建立されており、父弥八郎の顕彰碑も並んで立っています。

主な著作：

『大正政変を顧みて』（1914年）
『東亜指導者養成機関としての大学設立に関する建議案説明』（1939年）

伝記：

山下竜門『北海の太閤木下斗南』（1935年）
木下成太郎先生伝刊行会編『木下成太郎先生伝』（1967年）

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