木平勇吉

木平 勇吉

日本の林学者である木平勇吉氏（1936年生まれ）は、東京農工大学名誉教授の称号を有しています。長年にわたり森林科学の研究と教育に貢献し、特に地理情報システム（GIS）の森林分野での応用研究において顕著な業績を残しました。

経歴

京都府に生まれた木平氏は、1960年に京都大学農学部を卒業し、林学の研究者としての道を歩み始めました。大学卒業後は、林野庁で実務経験を積んだ後、信州大学に奉職しました。その後、東京農工大学に移り、教育・研究活動に加え、大学の演習林長として森林管理の実践にも携わりました。東京農工大学での勤務を経て、日本大学生物資源科学部の教授として、次世代の研究者や技術者の育成に力を注ぎました。

学術・社会活動

木平氏は学術界や社会に対し、多岐にわたる貢献を行っています。1996年からの2年間、日本林学会の会長を務め、林学の発展と普及に貢献しました。また、国の林政に関する重要な意思決定に関わる林政審議会では会長を務めるなど、政策提言においてもその専門知識を発揮しました。自身の専門分野である森林GISの振興においては、「森林GISフォーラム」を設立し、その会長として研究者、技術者、実務家間の情報交換や連携を促進し、この新しい技術の普及に尽力しました。

研究分野と貢献

木平氏の研究は、森林科学における地理情報システム（GIS）の応用を核としています。GISを用いることで、広範囲にわたる森林データを効率的に収集、分析、視覚化することが可能となり、森林計画の策定、環境保全、資源管理など、様々な課題解決に新たな手法をもたらしました。また、森林管理や合意形成のプロセス、地域生態システム学、流域環境の保全、森林の機能評価など、幅広いテーマで研究を進め、持続可能な森林の利用と保全に向けた理論的・実践的な基盤を築きました。

受賞歴

長年の研究活動と林学界への貢献は高く評価され、複数の権威ある賞を受賞しています。

1984年：日本林業技術協会奨励賞、日本林学賞
2000年：日本農学賞（読賣農学賞）
2019年：みどりの文化賞

これらの受賞は、木平氏の研究成果が林学分野だけでなく、広く農学分野や社会における「みどり」の文化・保全活動に対しても大きな影響を与えたことを示しています。

主な著書

木平氏は研究成果や知見を数多くの著書として刊行しており、これらは林学を学ぶ者や関連分野の実務家にとって重要な資料となっています。

『森林科学論』（朝倉書店、1994年）
『森林環境保全マニュアル』（朝倉書店、1996年）
『森林管理と合意形成』（全国林業改良普及協会、1997年）
『森林GIS入門』（日本森林技術協会、1998年）
『地域生態システム学』（朝倉書店、1998年）
日本大学森林資源科学科（編）『基礎・入門書3 森林資源科学入門』（2002年）
『流域環境の保全』（朝倉書店、2002年）
『森林計画学』（朝倉書店、2003年）
『森林の機能と評価』（日本林業調査会、2005年）
日本林業調査会（監修）『森林の許容伐採量－世界18カ国の考え方－』（2005年）
『森林科学』（文永堂、2007年）
『みどりの市民参加』（日本林業調査会、2010年）
『丹沢の自然再生』（日本林業調査会、2012年）

これらの著書は、森林科学の基礎から応用、実践的な手法、そして社会との関わりまで、木平氏の幅広い研究領域と貢献を示しています。木平勇吉氏は、森林科学、特にGISという新しい技術の導入を通じて、日本の林学研究と実践に多大な貢献を果たした第一人者として、その功績は長く記憶されるでしょう。

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