木戸峠

木戸峠について

木戸峠（きどとうげ）は、山口県内に所在し、山口市の仁保下郷と阿東篠目の境界に位置する峠です。この峠は、旧石州街道の一部であり、周防（吉敷郡）と長門（阿武郡）との国境にあたる場所です。また、木戸峠は本州の大分水界にもなっており、峠の北側では日本海に流れ込む阿武川水系、南側では瀬戸内海に注ぐ椹野川水系が広がっています。

歴史的背景

江戸時代以前、周防と長門を繋ぐ重要な交通路は複数存在しました。その中でも、仁保地を出発し木戸峠を経由する道が主要なルートとされていました。この峠を通過することで、山口と石見方面を結ぶ石州街道が形成されたとされています。木戸峠という名称の由来は、石州街道沿いに設置されていた関所、すなわち「木戸」に由来していると言われています。

明治時代に入っても、木戸峠は依然として主要な交通路として利用され、国道にも指定されていました。しかし、昭和30年代以降、新たに大峠方面へ向かうバイパス道路が整備され、木戸山トンネルが完成したことで、国道9号が通ることとなりました。この結果、木戸峠を利用する交通量は減少し、現在ではほとんど通行されていない状態となっています。

現在の状況

現在、木戸峠に至るルートは多くが林道のような状態であり、時折二輪車愛好者が訪れることがあります。峠に達するには、国道9号を阿東側から進み、木戸山トンネルの直前で左に分岐し数百メートル進む必要があります。木戸峠は大分水界に位置しますが、周辺は比較的緩やかな地形になっており、分水界自体も明瞭ではありません。

峠を越えると急に道幅が狭まり、山の斜面に寄り添うように砂利道が続きます。この道では路肩が崩れている部分や落石が多いため、走行には注意が必要です。約3～4kmの間、こうした林道が続き、最終的には山口市仁保地で国道376号へ合流します。このルートは利用者が非常に少なく、過去にはバイクが道から谷へ転落し、数年の後に発見されるという事故が起こったこともあります。

また、国道9号を進むと、最も高い地点、標高309メートルにあたる木戸山峠が存在します。この地点は木戸山トンネルの入り口近くまで上がりますが、木戸山峠と木戸峠は同じ地点を指す場合があります。

トンネルを抜けると、国道262号が右手に分岐し、こちらも山口方面へと続きます。分岐点から先は約4kmにわたり、沿道には桜の樹木が植えられていて、春の景観を楽しむことができます。しかし、大雨の際には宮野から木戸山にかけて通行止めになることもあるため注意が必要です。

• ---

木戸峠はただの地形ではなく、歴史、交通、自然の美しさが共存する特別な場所です。多くの人が通り過ぎることは少ないものの、訪れる価値のある静けさと風情にあふれています。

もう一度検索